スポーツマウスガードは市販と歯科のオーダーメイドで何が違う?マウスピースの選び方を歯科医師が解説
Last Updated on 3 days ago by prebeau
「部活でマウスピースが必要と言われた」
「スポーツ用品店で売っているものでも大丈夫?」
「せっかくなら歯医者でオーダーメイドを作ったほうがいい?」
スポーツを始めたとき、このように迷う方は少なくありません。
スポーツ時に歯や口の周囲を守る装置は、一般にスポーツマウスガードと呼ばれます。「スポーツ用マウスピース」「スポーツマウスピース」、競技によっては単に「マウスピース」や「ガムシールド」と呼ばれることもあります。
大切なのは呼び方ではなく、自分の歯並びや口の状態に適合し、競技中にきちんと装着し続けられることです。
市販のマウスガードにもいくつか種類があり、「市販品だから意味がない」というわけではありません。
一方、歯科医院で製作するカスタムメイドのスポーツマウスガードには、歯並びや噛み合わせ、競技特性などを確認しながら、一人ひとりに合わせて調整できるメリットがあります。
この記事では、市販のスポーツマウスガードと歯科で作るオーダーメイドタイプの違いを、歯科医師の立場からできるだけ公平に解説します。
スポーツマウスガードそのものについて詳しく知りたい方は、東京・赤坂で製作するオーダーメイドのスポーツマウスガードもあわせてご覧ください。
そもそもスポーツマウスガードは何のために使う?
スポーツマウスガードの主な目的は、スポーツ中の衝突、転倒、ボールや用具との接触などによって起こる歯や口腔周囲の外傷リスクを軽減することです。
スポーツ中には、
- 歯が欠ける・折れる
- 歯が大きく動く
- 歯が完全に抜ける
- 唇や頬の内側を傷つける
- 顎や口の周囲を負傷する
といった外傷が起こることがあります。
こうしたケガは、ラグビーやボクシングのようなコンタクトスポーツだけで起こるわけではありません。
野球、バスケットボール、サッカーなどでも、選手同士の接触、ボールとの衝突、転倒などによって歯や口を負傷する可能性があります。
American Dental Association(ADA)のマウスガードに関する解説でも、スポーツやレクリエーションに伴う口腔外傷の発生や重症度を抑えるために、適切にフィットしたマウスガードの使用が推奨されています。
ただし、ここで重要なのは、
「マウスガードを装着すればケガを100%防げる」という意味ではない
という点です。
マウスガードは、スポーツ時に歯や口の周囲を守るためのプロテクターの一つです。
また、脳震盪については、マウスガードを装着することで確実に予防できると断定できるだけの一貫した科学的根拠は確立していません。
そのため、PreBeau Oral Careでは「マウスガードをすれば脳震盪を防げる」といった断定的な説明は行っていません。
スポーツマウスガードは大きく3種類
スポーツ用のマウスガードは、大きく3つのタイプに分けて考えることができます。
1.既製品(ストックタイプ)
あらかじめ決められた形やサイズで販売されているタイプです。
購入後、そのまま口に入れて使用します。
比較的安価で、すぐに使用できることがメリットですが、個人の歯並びに合わせて作られているわけではありません。
そのため人によっては、
- 外れやすい
- 口を閉じていないと保持しにくい
- 話しにくい
- 違和感が大きい
と感じることがあります。
2.お湯で合わせるタイプ(ボイル&バイト)
スポーツ用品店やインターネット通販などでよく販売されているタイプです。
熱湯などで材料を軟らかくし、口の中に入れて自分の歯の形に合わせます。
既製のストックタイプよりも歯列に合わせやすい一方、仕上がりは製品や成形方法によって変わります。
加熱温度や時間、噛み方、指や舌での圧接などが適切でないと、
「思ったよりフィットしない」
「練習中にズレる」
「厚くて話しづらい」
と感じることもあります。
一方で、適切に成形され、自分の口にきちんと適合している市販品であれば、選択肢の一つになり得ます。
市販のマウスガードがすべて悪いということではありません。
3.歯科医院で作るカスタムメイド
歯科医院で歯列などの口腔内情報を確認し、一人ひとりの歯の形に合わせて製作するマウスガードです。
一般には、
カスタムメイドマウスガード
オーダーメイドマウスガード
歯科用スポーツマウスピース
などと呼ばれます。
市販品との大きな違いは、既製の形に自分の口を合わせるのではなく、自分の口に合わせてマウスガードそのものを製作できることです。
市販と歯科のオーダーメイドは何が違う?
| 比較項目 | 市販の既製タイプ | ボイル&バイト | 歯科のカスタムメイド |
|---|---|---|---|
| 歯列への適合 | 個人差が大きい | 自分で成形 | 個人の歯列に合わせて製作 |
| 保持性 | 製品による | 成形精度による | 個別調整が可能 |
| 厚み・形 | 基本的に既製 | 調整範囲は限定的 | 競技や口腔内に応じて設計可能 |
| 噛み合わせ | 個別調整なし | 限定的 | 歯科で確認・調整可能 |
| 会話・呼吸 | 個人差あり | 適合状態による | 適合や厚みを調整可能 |
| 費用 | 比較的安価 | 比較的安価 | 市販品より高い |
| 歯科受診 | 不要 | 原則不要 | 必要 |
単純に「高いものほど良い」と考えるのではなく、競技内容、使用頻度、年齢、歯並び、矯正の有無などを考えて選ぶことが大切です。
歯科のオーダーメイドで重要なのは「外れにくさ」
スポーツマウスガードを選ぶとき、「何mmの厚さがあるか」ばかり気にされることがあります。
もちろん厚みも重要ですが、実際のスポーツでは**保持性(retention)**も非常に重要です。
競技中には、
走る。
声を出す。
呼吸する。
相手と接触する。
素早く体を動かす。
こうした状況が続きます。
その間にマウスガードがズレたり、落ちそうになったりするようでは、選手自身が装着したくなくなってしまいます。
ADAのAthletic Mouth Protectorsに関する資料でも、理想的なマウスガードには口腔内への適切なフィットや安定した保持、快適性などが求められています。
また、2025年に発表されたカスタムメイドマウスガードと自己適合型マウスガードを比較したシステマティックレビュー/メタ解析では、フィット感、発音、呼吸などを含めた快適性が評価されています。
→ PubMed:Customized mouthguardsとself-adapted mouthguardsの比較研究
つまりスポーツマウスガードでは、
「口に入れられること」と「競技中に問題なく使い続けられること」は別
なのです。
噛み合わせまで確認できるのが歯科製マウスガードの特徴
歯科医院でマウスガードを作るメリットは、単に歯型を採れることだけではありません。
製作前に、
- 歯並び
- 上下の歯の関係
- 噛み合わせ
- 歯そのものの状態
- 歯周組織の状態
- 顎の状態
- 矯正装置の有無
- 乳歯から永久歯への生え変わり
などを確認できます。
PreBeau Oral Careでは、スポーツマウスガードを製作する際に上顎だけではなく下顎側の情報も確認し、上下の噛み合わせを考慮しながら製作しています。
当院での製作方法について詳しくは、歯科で作るカスタムメイドのスポーツマウスガードをご覧ください。
「オーダーメイドなら運動能力が上がる」とまでは言えない
スポーツマウスガードについて検索すると、
「噛み合わせを整えると力が出る」
「マウスピースを装着するとパフォーマンスが上がる」
といった情報を見かけることがあります。
実際に、マウスガードとスポーツパフォーマンスとの関係を調べた研究は存在します。
一方で、研究によって対象となる競技、評価方法、マウスガードの種類などが異なっています。
そのため、すべての選手、すべての競技で運動能力が向上すると断言することはできません。
マウスガードとスポーツパフォーマンスを検討したシステマティックレビューでも、研究結果や評価方法にはばらつきがあります。
→ PubMed:マウスガードとスポーツパフォーマンスに関するシステマティックレビュー
したがって、スポーツマウスガードを使用する第一の目的は、
歯や口腔周囲を保護すること
と考えるのが適切です。
そのうえで、フィット感、呼吸のしやすさ、会話のしやすさ、噛みやすさなどを調整し、できるだけ競技の邪魔になりにくいマウスガードを目指すことが重要だと考えています。
ラグビー・アメフト・ラクロスをしている方
ラグビー、アメリカンフットボール、ラクロスなどは、選手同士の身体接触が起こりやすいスポーツです。
また、マウスガードの着用については競技、大会、年齢区分などによってルールが定められている場合があります。
競技規則は変更されることがあるため、実際に出場する大会や所属団体の最新ルールを確認することも重要です。
詳しくは、ラグビー・アメフト・ラクロスのマウスガード|大学スポーツで使うマウスピースの選び方で解説しています。
ボクシング・キックボクシング・空手・柔道をしている方
ボクシングやキックボクシングなど、顔面への直接的な衝撃が想定される競技では、マウスピースのフィット感は特に重要になります。
空手や柔道などについても、競技種目や大会によってマウスガードの扱いや規則が異なる場合があります。
詳しくは、ボクシング・キックボクシング・空手・柔道のマウスピース|格闘技用マウスガードの選び方をご覧ください。
野球・サッカー・バスケでも歯の外傷は起こる
スポーツマウスガードというと、ラグビーや格闘技だけをイメージする方も多いかもしれません。
しかし、野球ではボールとの衝突、バスケットボールでは選手同士の接触や肘、サッカーでは接触や転倒などによって歯や口を負傷する可能性があります。
「着用が義務ではない=歯のケガが起こらない」という意味ではありません。
詳しくは、野球・サッカー・バスケでもマウスガードは必要?球技で歯を守るスポーツ用マウスピースをご覧ください。
子ども・中高生は成長も考える
子どもや中高生の場合、大人とは違う点があります。
成長期には顎が成長し、乳歯から永久歯への生え変わりも進みます。
そのため、現在ぴったり合っているマウスガードでも、成長や歯の萌出によって適合状態が変化することがあります。
「一度作ったら何年もそのまま使える」とは限りません。
部活動やクラブチームでスポーツをしているお子さんについては、子ども・中高生のスポーツマウスガード|部活で使うマウスピースと成長期の注意点もご覧ください。
矯正中でもスポーツマウスガードは必要?
ワイヤー矯正やマウスピース矯正中にスポーツを行っている方もいます。
矯正治療中は歯が移動するため、通常とは異なる配慮が必要になることがあります。
特に、自分で成形するタイプのマウスガードを強く歯に密着させることが適切とは限りません。
矯正中の方は、自己判断だけで選ばず、矯正を担当している歯科医師にも確認することをおすすめします。
詳しくは、矯正中でもスポーツマウスガードは使える?ワイヤー矯正・マウスピース矯正中の注意点で解説しています。
マウスガードが必要なスポーツは?
「どのスポーツなら絶対にマウスガードが必要ですか?」
という質問もよくあります。
しかし、
「ラグビーだから必要」
「サッカーだから不要」
というように単純に分けることはできません。
競技によって外傷のリスクが異なるだけでなく、競技団体、大会、年齢カテゴリーなどによって装着規則も異なる場合があります。
義務なのか、推奨なのか、任意なのかについては、参加する大会や競技団体の最新規則を確認してください。
競技ごとの考え方については、マウスガードが必要なスポーツは?義務化・推奨される競技とマウスピースのルールで詳しく解説しています。
市販品とオーダーメイド、結局どちらを選べばいい?
すべての人が必ず歯科でマウスガードを作らなければならない、ということではありません。
例えば、
- 競技を始めたばかり
- 使用頻度が低い
- まずは費用を抑えて試したい
という場合には、適切にフィットさせた市販のボイル&バイトタイプを使用することも選択肢の一つです。
一方で、
- 接触の多い競技をしている
- 練習や試合の頻度が高い
- 市販品がすぐ外れる
- 息苦しい
- 話しづらい
- 噛み合わせまで確認したい
- 歯列矯正中
- 成長期
- 過去にスポーツで歯をケガしたことがある
といった場合には、一度歯科医院で相談してみる価値があります。
重要なのは、
「市販か歯科か」という二択だけで考えるのではなく、自分がそのマウスガードを正しく、継続して使用できるか
ということです。
どれほど優れたマウスガードでも、違和感が強く、練習中に外してしまっては十分に役割を果たすことができません。
スポーツで歯が折れた・抜けた経験がある方へ
スポーツ中には歯が欠けるだけでなく、大きく動いたり、完全に抜けたりすることがあります。
こうした歯の外傷では、ケガをした直後の対応が、その後の治療や予後に影響する場合があります。
すでにスポーツで歯をケガしたことがある方や、万が一のときの対応を知っておきたい方は、スポーツで歯が折れた・抜けたときは?歯の外傷の応急処置とマウスガードによる予防もあわせてご覧ください。
東京・赤坂でオーダーメイドのスポーツマウスガードを検討している方へ
PreBeau Oral Careでは、一人ひとりの歯列や噛み合わせを確認したうえで、カスタムメイドのスポーツマウスガードを製作しています。
単に「厚いマウスピースを作る」のではなく、
- 口の中で安定して保持されること
- 競技中に使い続けやすいこと
- 噛み合わせに大きな違和感を生じさせないこと
を重視しています。
当院のオーダーメイド・スポーツマウスガードは以下の通りです。
・単一層(単色)16,500円
・単一層マーブル・デザイン性 22,000円
・競技用オーダーメイド 38,500円(税込・自由診療)
製作方法や診療内容について詳しくは、東京・赤坂のPreBeau Oral Care|オーダーメイド スポーツマウスガードをご覧ください。
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執筆・監修
毛利 国安(Kuniyasu Mori)
歯科医師/PreBeau Oral Care 院長
University of WashingtonでPhysiologyを学び、大阪大学歯学部卒業後、University of MichiganおよびUCLAで研究・臨床研修を経験。
現在は東京・赤坂のPreBeau Oral Careで診療を行っています。
参考文献・参考情報
- American Dental Association. Athletic Mouth Protectors (Mouthguards).
American Dental Associationによるスポーツマウスガードの解説 - Ingle A, Dhawan P, Rani S, Khan U. A comprehensive systematic review and meta-analysis comparing the comfort level of customized mouthguards to self-adapted mouthguards in athletes. Quintessence International. 2025;56(5):382-392.
PubMed:PMID 40298181 - Golem DL, et al. Is there enough evidence that mouthguards do not affect athletic performance? A systematic literature review. International Dental Journal. 2018.
PubMed:PMID 29808910 - Position Statement and Recommendations for Custom-Made Sport Mouthguards. Dental Traumatology. 2025.
PubMed:PMID 39578680