なぜPreBeau Oral Careは「治療より予防」を大切にするのか|生理学から歯科医療へ
Last Updated on 2 weeks ago by prebeau
歯科医院というと、
「むし歯を治すところ」
「歯が痛くなったら行くところ」
というイメージを持つ方が多いかもしれません。
もちろん、悪くなった歯を治療することは大切です。
しかし、歯科医療に携わっていると、もう一つ強く感じることがあります。
それは、
「できれば、大きな治療が必要になる前に守りたい」
ということです。
一度削った歯は、元の天然歯質には戻りません。
一度失った歯周組織も、すべて完全に元通りにできるわけではありません。
だからこそPreBeau Oral Careでは、
治療すること以上に、治療を必要としない状態をできるだけ長く維持すること
を大切にしています。
この考え方には、私自身が歯科医師になる前に学んだ**生理学(Physiology)**というバックグラウンドも関係しています。
私は最初から「歯」だけを学んでいたわけではありません
歯科医師になる前、私は生理学を学びました。
生理学は、
- 神経
- 循環
- 呼吸
- 免疫
- 内分泌
- 代謝
- 筋肉
- 消化
など、人体がどのように機能しているかを学ぶ分野です。
そこで強く学ぶのは、
体は、それぞれの臓器が完全に独立して動いているわけではない
ということです。
心臓だけ。
肺だけ。
脳だけ。
口だけ。
というように切り離して考えるのではなく、神経、血流、ホルモン、免疫、代謝などを通して、全身が一つのシステムとして機能しています。
その後、歯科医療を学ぶようになっても、この視点は私の中に残りました。
口も当然、「体の一部」です
歯科では歯や歯ぐきを診察します。
そのため、口は全身とは別の領域のように見えることがあります。
しかし実際には、口腔にも、
- 血管
- 神経
- 免疫細胞
- 唾液腺
- 筋肉
- 微生物
が存在しています。
そして、
食べる。
飲み込む。
話す。
呼吸する。
笑う。
といった、日常生活に欠かせない機能に関わっています。
つまり、
口腔は、単なる「歯が並んでいる場所」ではありません。
全身の一部であり、生活の入口でもあります。
歯周病を見ると「口と全身」は分けにくい
分かりやすい例が歯周病です。
歯周病は、単純に「歯ぐきに細菌がいる病気」ではありません。
細菌性バイオフィルムに対して、
私たち自身の免疫・炎症反応
が起こり、その反応が慢性化することで歯周組織が破壊されていきます。
つまり歯周病も、生理学的には、
細菌
+
免疫
+
炎症
+
組織反応
として考えることができます。
そして現在では、歯周炎と、
- 糖尿病
- 心血管疾患
- 呼吸器疾患
などとの関連についても研究されています。
→ 歯周病はなぜ全身と関係する?「慢性炎症」を生理学から考える
ただし「口を治せば全身が治る」とは考えていません
口腔と全身の関係について注目が集まる一方で、極端な表現も見かけるようになりました。
たとえば、
「歯周病を治せば心筋梗塞を予防できる」
「歯周病菌が認知症の原因」
「歯をきれいにすれば全身疾患を予防できる」
といった表現です。
しかし、医学・歯学では、
関連(association)
と、
因果関係(causation)
は別に考える必要があります。
研究で関連が認められたからといって、それが直接的な原因であるとは限りません。
PreBeau Oral Careでは、
「口を健康にすれば、すべての病気を防げる」
とは考えていません。
それでも、
口腔を健康な状態に維持すること自体に十分な価値がある
と考えています。
なぜ「治療より予防」なのか
歯科治療には、一つ大きな特徴があります。
それは、
治療の多くが「失われたものを人工物で補う」医療でもある
ということです。
たとえば、むし歯が進行すると歯を削ります。
削った部分には、
- コンポジットレジン
- セラミック
- 金属
などを用いて修復します。
歯を失えば、
- ブリッジ
- 義歯
- インプラント
などで機能を回復します。
もちろん、これらは重要で価値のある治療です。
しかし、
人工物は天然歯そのものではありません。
だからこそ、
できるだけ天然歯を削らず、できるだけ自分の歯を長く維持する
ということには大きな意味があります。
「削らないための予防」
PreBeau Oral Careでは、
できるだけ削らない
という考え方を大切にしています。
しかし、
「削らない治療だけを選ぶ」
という意味ではありません。
むし歯が進行していれば、歯を削る必要がある場合もあります。
重要なのは、
「削らなくて済む段階で、できることをしておく」
ということです。
つまり、
予防こそが、もっとも低侵襲な歯科医療の一つ
とも考えられます。
大きな治療になる前に気づく
歯科では、症状が出たときにはすでに病気が進行していることがあります。
特に歯周病は、
痛みがないまま進行することがある病気
です。
→ 「痛くないから大丈夫」は本当?歯周病が静かに進行する理由
だからこそ、
「痛くなったら歯医者へ行く」
だけではなく、
痛くないうちに状態を確認する
ことが重要になります。
「クリーニング」だけが予防ではありません
予防歯科というと、
「定期的に歯石を取ること」
と思われることがあります。
しかし、私たちが考える予防はもっと広いものです。
たとえば、
- バイオフィルムがどこに残っているか
- 歯周ポケットは深くなっていないか
- 歯肉から出血していないか
- むし歯のリスクは高くないか
- フロスや歯間ブラシが適切に使えているか
- 歯ぎしりや噛み合わせの問題はないか
- 補綴物やインプラント周囲は管理できているか
などを継続的に確認します。
つまり、
「掃除」ではなく「管理」
という考え方です。
バイオフィルムという考え方
むし歯や歯周病を考えるうえで重要なのが、デンタルバイオフィルムです。
プラークは単なる食べかすではありません。
多くの微生物が集まって形成する、複雑な微生物群集です。
そのため、
「汚れを取れば終わり」
ではなく、
バイオフィルムが形成されにくく、病気につながりにくい口腔環境を維持する
という考え方が重要になります。
→ 毎日歯みがきしていても必要?バイオフィルムとプロフェッショナルケア
GBTも「バイオフィルムを中心に考える」方法の一つ
PreBeau Oral Careでは、必要に応じて**Guided Biofilm Therapy(GBT)**を取り入れています。
GBTでは、
バイオフィルムを染め出して見えるようにする
↓
患者さんと一緒に付着部位を確認する
↓
セルフケアを改善する
↓
必要な部分をプロフェッショナルケアする
↓
再評価する
という流れを重視します。
私がこの考え方を大切にしている理由は、
「とにかく削る、磨く」ではなく、まず問題の場所を確認して必要なところへ介入する
という点にあります。
これは、できるだけ低侵襲に考えるPreBeau Oral Careの方針とも相性がよいと考えています。
予防は「歯のため」だけではありません
歯を守ることには、
むし歯を防ぐ。
歯周病を防ぐ。
歯を失わない。
という直接的な目的があります。
しかし、その先もあります。
歯があることで、
食べる。
話す。
笑う。
という日常の機能を維持できます。
口腔の健康とQOLについては、WHOも心理的・社会的な側面を含めて考えています。
→ お口の健康と「心」は関係する?歯・口腔機能とメンタルヘルス・QOL
自分の歯を守ることは、
「歯を何本残すか」
という数字だけではなく、
その歯を使ってどう生活できるか
という問題でもあります。
「食べる」という機能を守る
食事は栄養摂取だけではありません。
家族との食事。
友人との外食。
旅行先での食事。
好きなものを噛むこと。
こうしたことは、生活の楽しみにもつながります。
歯や口腔機能を維持することは、
食べられるものの選択肢を長く保つ
ことにもつながります。
「話す」「笑う」という機能を守る
口はコミュニケーションにも関係します。
歯の見た目。
口臭。
歯の喪失。
噛みにくさ。
こうした問題が、
「人前で話しにくい」
「思いきり笑いにくい」
という心理的な負担につながることがあります。
だからこそ、口腔健康を考えるとき、
病気がないかどうかだけではなく、生活の中で困っていないか
という視点も重要です。
お口の健康と認知機能についても研究が進んでいます
歯の喪失や歯周病と認知機能との関連についても、多くの研究があります。
→ 口の健康と認知機能には関係がある?歯の喪失・歯周病と脳をめぐる研究
ただし、
「歯を守れば認知症を予防できる」
とまでは現時点で言えません。
それでも、
自分の歯をできるだけ維持し、
噛む機能を保ち、
食事を楽しむ。
そのこと自体に、十分な価値があります。
口腔と呼吸器の関係もあります
高齢になると、
- 嚥下機能
- 咳反射
- 口腔衛生
- 義歯管理
などが重要になります。
口腔内細菌を含む唾液などを誤嚥することが、呼吸器感染に関係する可能性も研究されています。
口腔管理は、若いときだけの問題ではありません。
高齢になったときに、どのような口で生活できるか
という長期的な視点が重要です。
予防は「今日」ではなく「10年後、20年後」を見る
歯科治療では、治療した直後の結果が重要なのはもちろんです。
しかし予防では、
「この状態を10年後も維持できるか」
という視点が重要になります。
たとえば今、痛みがなくても、
- バイオフィルムが多い
- 歯ぐきから出血する
- 歯周ポケットが深くなっている
- むし歯リスクが高い
のであれば、将来的に大きな治療が必要になる可能性があります。
だからこそ、
今困っているところを治療する
だけでなく、
未来の治療をできるだけ減らす
という視点を持つことが大切です。
「予防に通う」というより「自分の口を管理する」
私は、
「歯医者へ定期的に通っていれば大丈夫」
という考え方も少し違うと思っています。
歯科医院へ通うこと自体が目的ではありません。
大切なのは、
自分の口腔状態を理解し、自宅でも管理できるようになること
です。
歯科医院は、そのためのサポートをする場所です。
だからこそ、
- 染め出し
- ブラッシング指導
- フロス
- 歯間ブラシ
- プロフェッショナルケア
などを組み合わせます。
一人ひとり「予防の内容」は違います
口腔環境は全員同じではありません。
たとえば、
- 歯並び
- 唾液
- 歯周病歴
- むし歯歴
- 喫煙
- 糖尿病
- 年齢
- インプラント
- 補綴物
- セルフケア能力
などによってリスクは変わります。
そのため、
「全員3か月に1回クリーニング」
のように一律に考えるのではなく、
その人の状態に合わせてメンテナンス内容や間隔を考えることが重要です。
自由診療だからこそ「予防」に時間を使う
PreBeau Oral Careは、予防と美容を中心とした自由診療の歯科医院です。
自由診療というと、
「高額な治療をする場所」
というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし私たちが大切にしているのは、
大きな治療をする前に、できるだけ病気を予防すること
です。
必要な検査。
バイオフィルムの確認。
セルフケア。
プロフェッショナルケア。
一人ひとりの口腔環境について時間をかけて考える。
そのための予防歯科も、自由診療だからこそ大切にできる医療の一つだと考えています。
生理学から歯科医療へ
生理学を学んでいたころは、自分が将来歯科医師として、
「バイオフィルム」
「歯周炎」
「むし歯」
を診ることになるとは想像していませんでした。
しかし今振り返ると、
人体を一つのシステムとして見る
という考え方は、現在の歯科医療にも強くつながっています。
口も体の一部です。
歯ぐきにも炎症が起こります。
口腔機能は食事や会話に関わります。
歯を失えば生活にも影響します。
だからこそ、
「歯だけを見る歯科」ではなく、「その歯と口を使ってどう生きるか」を考える歯科
でありたいと思っています。
PreBeau Oral Careが目指すのは「大きく治療しないための歯科」
必要な治療をしないという意味ではありません。
必要な場合には、適切な治療を行うことが大切です。
しかし、
大きく削る前に。
歯を失う前に。
痛くなる前に。
できることがあります。
口腔環境を確認する。
バイオフィルムを管理する。
セルフケアを見直す。
歯周病を早期に見つける。
むし歯リスクを評価する。
そうした積み重ねによって、
必要な治療をできるだけ小さくする。
これが、PreBeau Oral Careが「治療より予防」を大切にしている理由です。
まとめ|お口から、これからの健康を考える
PreBeau Oral Careが予防を大切にする理由は、
単に、
「むし歯になりたくないから」
「歯周病になりたくないから」
だけではありません。
自分の歯をできるだけ守り、
食べる。
話す。
笑う。
という口腔機能を長く維持する。
そのために、
悪くなってから大きく治療するのではなく、できるだけ悪くならないように管理する。
これが私たちの予防に対する基本的な考え方です。
そして、生理学を学んだ経験から私自身が感じているのは、
口腔は体から独立した場所ではない
ということです。
だからといって、
「口を健康にすればすべての病気を予防できる」
わけではありません。
科学的に分かっていることと、まだ分かっていないことを区別しながら、
お口を健康に保つことを、その人の健康な生活を支える一つの土台として考える。
それがPreBeau Oral Careの目指す予防歯科です。
PreBeau Oral Careの予防・メンテナンスについてはこちらをご覧ください。
→ 赤坂で予防歯科・GBTクリーニング・歯のメンテナンス|PreBeau Oral Care
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→ 毎日歯みがきしていても必要?バイオフィルムとプロフェッショナルケア
よくある質問
Q. PreBeau Oral Careが「治療より予防」を大切にするのはなぜですか?
一度削った天然歯質や失われた歯周組織を完全に元通りにすることは簡単ではないためです。必要な治療は適切に行いつつ、できるだけ大きな治療が必要になる前に口腔環境を管理することを大切にしています。
Q. 予防歯科に通えば、むし歯や歯周病を完全に防げますか?
完全に防げるわけではありません。むし歯や歯周病には、セルフケア、食生活、唾液、喫煙、糖尿病、遺伝的要因などさまざまな要因が関係します。予防歯科の目的はリスクをできるだけ下げ、問題を早く見つけ、自分の歯を長く維持することです。
Q. 痛くなくてもメンテナンスは必要ですか?
歯周病などは自覚症状が少ないまま進行することがあります。必要性や頻度は一人ひとり異なりますが、症状だけでは判断できない変化を定期的に確認することには意味があります。
Q. GBTは全員に必要ですか?
必ずしも全員に同じ方法が必要なわけではありません。GBTはバイオフィルムを可視化して管理する方法の一つです。歯周状態、歯石、補綴物、インプラントなどを確認し、必要なケアを選択することが重要です。
参考文献・情報源
- World Health Organization. Oral health.
https://www.who.int/health-topics/oral-health - World Health Organization. Oral health – Fact sheet.
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/oral-health - Sanz M, Herrera D, Kebschull M, et al. Treatment of stage I–III periodontitis — The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2020.
https://www.efp.org/education/continuing-education/clinical-guidelines/guideline-on-treatment-of-stage-i-iii-periodontitis/ - Papapanou PN, Sanz M, Buduneli N, et al. Periodontitis: Consensus report of Workgroup 2 of the 2017 World Workshop. J Clin Periodontol. 2018.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29926490/ - Herrera D, Sanz M, Shapira L, et al. Association between periodontal diseases and cardiovascular diseases, diabetes and respiratory diseases: Consensus report of the Joint Workshop by the EFP and WONCA Europe. J Clin Periodontol. 2023.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36935200/
※本記事は、予防歯科、口腔と全身の健康について一般的な医学・歯学情報を提供することを目的としています。個々の診断・治療・メンテナンス内容は口腔状態や全身状態によって異なりますので、歯科医師にご相談ください。
執筆・監修:歯科医師 毛利国安
PreBeau Oral Care