インプラントやセラミックが多い方にエアフローが向いている理由
Last Updated on 3 days ago by prebeau
インプラントやセラミック治療を多く受けている方にとって、歯科メンテナンスは「歯石や着色を取るため」だけのものではありません。
大切なのは、治療した歯・インプラント・補綴物と、その周囲の歯肉や天然歯をできるだけ長く良好な状態で維持することです。
「セラミックを傷つけずにクリーニングしたい」
「インプラント周囲のバイオフィルムを定期的に除去したい」
「高額な治療を受けたので、メンテナンス方法にもこだわりたい」
という方では、エアフロー(Air Polishing)が選択肢になることがあります。
エアフローは、水・空気・専用パウダーを噴射し、歯や補綴物周囲に付着したバイオフィルムや着色を除去する方法です。
特に現在使用されるエリスリトールやグリシンなどの低研磨性パウダーは、従来の炭酸水素ナトリウムなどと比較して、修復材料表面への影響を抑えるための選択肢とされています。
ただし、「エアフローならインプラントやセラミックを絶対に傷つけない」という意味ではありません。
修復材料の種類、パウダー、噴射条件、使用部位などによって影響は異なるため、それぞれの材料を理解したうえで使用することが重要です。
東京・赤坂のPreBeau Oral Careでは、GBT(Guided Biofilm Therapy)の考え方を取り入れ、インプラントやセラミックなどの修復物も確認しながら自費メンテナンスを行っています。
監修:歯科医師 毛利 国安
PreBeau Oral Care 院長
インプラントやセラミックは「入れたら終わり」ではありません
インプラントやセラミックは、失った歯や大きく損傷した歯を回復する重要な治療方法です。
しかし、治療が終了した時点がゴールではありません。
インプラントそのものはむし歯になりませんが、周囲には歯肉や骨があります。
また、セラミック自体がむし歯になるわけではありませんが、その下や周囲には天然歯があります。
つまり、治療後も
- バイオフィルム
- 歯肉の炎症
- 出血
- 歯周ポケット
- インプラント周囲組織
- 補綴物の境界
- 咬み合わせ
- 清掃状態
などを継続して確認する必要があります。
特にインプラント周囲のプロフェッショナルなバイオフィルム除去は、インプラント周囲組織の健康を維持するうえで重要とされています。
インプラント周囲にもバイオフィルムは形成されます
「インプラントは人工物だから汚れにくい」
と思われることがあります。
しかし、インプラントの上部構造やその周囲にも、天然歯と同じようにバイオフィルムは形成されます。
バイオフィルムが蓄積すると、周囲の歯肉に炎症が起こることがあります。
インプラント周囲の軟組織に炎症が限局している状態はインプラント周囲粘膜炎、さらに支持骨の喪失を伴う状態はインプラント周囲炎と呼ばれます。
そのため、
「むし歯にならないからメンテナンスはいらない」
という考え方は適切ではありません。
むしろインプラントがある方では、天然歯とは異なる材料や構造を考慮しながら、バイオフィルムを継続して管理することが重要です。
インプラント周囲にエアフローを使う理由
インプラントメンテナンスでは、
バイオフィルムを除去しながら、できるだけインプラント表面や補綴物への不要な影響を抑える
という両方の視点が必要です。
低研磨性のエリスリトールパウダーを使用したエアポリッシングについては、インプラントメンテナンスに関する研究が蓄積されています。
2025年にInternational Journal of Dental Hygieneに掲載されたsystematic reviewでは、エリスリトールを使用したエアポリッシングについて、インプラント表面のバイオフィルム除去に有効性が示され、検討された研究では重大なインプラント表面・周囲組織への損傷は報告されませんでした。
ただし、この結果から、
「どのインプラントにも無条件にエアフローを使用してよい」
と解釈することはできません。
インプラント表面の露出状態、ポケットの深さ、補綴物の材料、炎症の程度などを確認したうえで判断する必要があります。
→ インプラント周囲炎予防に大切なメンテナンス|エアフロー・バイオフィルム管理・オゾン水
実際の臨床研究でもインプラントメンテナンスに使用されています
2025年に報告されたランダム化臨床試験では、インプラントメンテナンスを行う120名を対象に、
エリスリトールを用いたエアポリッシング
と
PEEKチップを用いた超音波器具
が比較されています。
12か月後、両群とも歯周ポケット、出血、プラーク指数などが改善し、2つの方法の間に統計学的な有意差は認められませんでした。
また、ジルコニア、二ケイ酸リチウム、長石系セラミックといった補綴材料による治療結果の差も確認されませんでした。
これは、
「エアフローの方が超音波より必ず優れている」
という結果ではありません。
むしろ、患者様やインプラントの状態に応じて、適切な方法を選択することが重要であることを示しています。
セラミックにもバイオフィルムは付着します
セラミックは天然歯と比較して表面が滑らかな材料ですが、口腔内に存在する以上、バイオフィルムが全く付着しないわけではありません。
さらに重要なのは、セラミックそのものだけではなく、
セラミックと天然歯との境界部分
です。
例えばクラウンであれば、
- セラミッククラウン
- 接着材料
- 天然歯
- 歯肉
が接する部分があります。
この周囲にバイオフィルムが蓄積すれば、歯肉炎や歯周病、二次的なむし歯などにつながる可能性があります。
そのため、セラミック治療後も定期的なメンテナンスが必要です。
「セラミックならエアフローで傷つかない」は正確ではありません
ここは特に重要です。
2025年にJournal of Esthetic and Restorative Dentistryに掲載されたsystematic reviewでは、42件の実験研究を対象として、超音波器具やエアポリッシングが各種修復材料へ与える影響が検討されています。
その結果、材料によって影響が異なり、
ジルコニアや二ケイ酸リチウムは比較的影響を受けにくい一方、レジン系コンポジットなどは表面粗さが増加しやすい
ことが示されています。
またエアポリッシングでは、炭酸水素ナトリウムや炭酸カルシウムなどのパウダーに比べ、エリスリトールやグリシンが最も低研磨性だったと報告されています。
つまり、
「エアフローだから安全」ではなく、「材料に合わせて適切なパウダーと使用方法を選択すること」が重要
です。
→ エアフローとは?歯や被せ物への負担を抑えたクリーニングを解説
コンポジットレジンは特に注意が必要です
患者様から見ると、
「白い被せ物・詰め物」
はすべてセラミックに見えるかもしれません。
しかし、実際には、
- ジルコニア
- 二ケイ酸リチウム
- 長石系セラミック
- CAD/CAMレジン
- コンポジットレジン
など、さまざまな材料があります。
これらの表面特性は同じではありません。
2025年のコンポジットレジンを対象とした実験研究では、低研磨性とされるパウダーを使用した場合でも、エアポリッシング後に一定のコンポジット材料の損失が確認されています。
したがって、
低研磨性パウダー=材料への影響が完全にゼロ
という意味ではありません。
こうした理由から、メンテナンス前にどの部分が天然歯で、どこがセラミックやレジンなのかを把握しておくことが重要になります。
高額なセラミック治療ほど「磨けば磨くほどよい」わけではありません
きれいな状態を維持したいからといって、毎回すべての表面を強く研磨すればよいわけではありません。
メンテナンスは一度だけではなく、
数か月〜数年にわたり繰り返して受ける処置
だからです。
一回の影響が小さくても、必要のない研磨を長期間繰り返すことはできるだけ避けたいところです。
そのため、
- まずバイオフィルムがどこにあるか確認する
- 必要な場所へアプローチする
- 材料に応じて器具やパウダーを選ぶ
- 必要のない表面をむやみに研磨しない
という考え方が重要になります。
この点は、バイオフィルムを可視化してから処置するGBTの考え方とも相性があります。
GBTでは「汚れている場所を確認してから」クリーニングします
GBT(Guided Biofilm Therapy)では、バイオフィルムの染め出しを行い、
どこにバイオフィルムが残っているか
を確認してから処置します。
そのため、
「歯だから全部研磨する」
「セラミックだから全部磨く」
という考え方ではなく、
バイオフィルムが存在する場所を確認して必要な部位を中心に処置する
という考え方を取ることができます。
特に多数のセラミック修復物、インプラント、ブリッジなどがある方では、こうした選択的なメンテナンスは重要です。
→ GBTと従来のPMTCは何が違う?自費メンテナンスの選び方
インプラント・セラミックが多い方のメンテナンスで確認したいこと
クリーニングだけでなく、定期的に次のような点を確認することが重要です。
インプラント周囲
- プラーク・バイオフィルム
- 歯肉からの出血
- 腫れ
- 歯周ポケット
- 排膿
- 補綴物の状態
- 清掃しやすさ
- 咬み合わせ
セラミック周囲
- 歯肉の炎症
- セラミックと天然歯の境界
- プラークの付着
- 二次的なむし歯
- 欠け・破折
- 咬み合わせ
- 清掃状態
天然歯
インプラントやセラミックが多くても、残っている天然歯を守ることも非常に重要です。
長期的には、
「どの材料が入っているか」だけではなく、口腔内全体をひとつの環境として管理する
必要があります。
エアフローだけでインプラント周囲炎を治療できるわけではありません
「インプラント周囲にエアフローが使える」
という情報を見ると、
エアフローでインプラント周囲炎を治せる
と誤解されることがあります。
しかし、これは同じ意味ではありません。
インプラント周囲炎では、
- 炎症の程度
- 骨吸収
- ポケットの深さ
- インプラント表面
- 補綴物形態
- 清掃性
- 咬合
- 全身的リスク
などを評価する必要があります。
低研磨性エアポリッシングはバイオフィルム除去の選択肢になりますが、すでに進行したインプラント周囲炎をエアフローだけで治療できるわけではありません。
メンテナンスと疾患治療は分けて考える必要があります。
エアフローと従来器具は「どちらか一方」ではありません
Supportive Periodontal Therapyやインプラントメンテナンスにおいて、エアポリッシングとハンド・超音波器具を比較したsystematic review / meta-analysisでは、臨床的な歯周指標で一方が明確に優れるとは限らない一方、エアポリッシングでは患者の快適性などで利点が報告されています。
つまり、
エアフロー vs 超音波
という二者択一で考える必要はありません。
バイオフィルムにはエアフローを使用し、硬い歯石には必要な器具を使用するなど、目的によって使い分けることが重要です。
インプラントやセラミックが多い方こそ「自費メンテナンスの内容」を確認する
自費クリーニングを選ぶ際には、
「60分だから良い」
「エアフローがあるから良い」
「料金が高いから良い」
というだけで判断する必要はありません。
特に高額な補綴治療が多い方では、
- 修復材料を把握しているか
- インプラント周囲を確認しているか
- バイオフィルムの位置を確認しているか
- 材料に応じて器具・パウダーを使い分けているか
- 必要以上に研磨していないか
- 歯肉や歯周組織も評価しているか
などを見ることが重要です。
→ 自費クリーニングは何が違う?時間をかけたバイオフィルム管理と予防歯科
PreBeau Oral Careではインプラント・セラミックを含めてメンテナンスします
東京・赤坂のPreBeau Oral Careでは、天然歯だけではなく、
- インプラント
- セラミック
- ジルコニア
- ブリッジ
- コンポジットレジン修復
などを含めて口腔内を確認します。
そのうえで、
- GBT
- エアフロー
- PMTC
- 必要に応じた歯石除去
- 歯周組織の評価
- インプラント周囲の確認
- 必要に応じた5ppmオゾン水
- セルフケアの確認
などを組み合わせます。
PreBeau Oral Careではインプラントの新規埋入を目的とするのではなく、すでにインプラント治療を受けている方のメンテナンス、インプラント周囲の管理、上部構造に関する相談にも対応しています。
高額な治療を長く維持するために
インプラントやセラミックに費用をかけたからといって、自動的に長期間維持できるわけではありません。
治療後こそ、
天然歯・歯周組織・インプラント・補綴物を定期的に確認し、バイオフィルムを管理すること
が重要です。
エアフローは、そのための有用な選択肢のひとつです。
ただし、
「エアフローだから安全」
「エアフローなら傷つかない」
「エアフローだけで十分」
ではありません。
材料、口腔内の状態、歯周組織、インプラント周囲の状態を評価し、適切な器具や方法を選択することが重要です。
PreBeau Oral Careでは、
「高額な治療をさらに増やす」のではなく、「現在ある歯と治療した部分をできるだけ長く守る」
という視点からメンテナンスを行っています。
→ 東京・赤坂のGBT・エアフローによる自費歯科メンテナンス
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参考文献
Delucchi F, et al.
Efficacy and safety of erythritol air-polishing in implant dentistry: A systematic review.
International Journal of Dental Hygiene. 2025.
Esati J, et al.
Adverse Effects of Ultrasonic Instrumentation and Air Polishing on Dental Restorations: A Systematic Review of Laboratory Studies.
Journal of Esthetic and Restorative Dentistry. 2025.
Effectiveness of Erythritol-Based Air Polishing and Ultrasonic Instrumentation with PEEK Inserts in Peri-Implant Maintenance: A Randomized Clinical Trial Including Different Prosthetic Materials.
2025.
Efficacy of air polishing in comparison with hand instruments and/or power-driven instruments in supportive periodontal therapy and implant maintenance: a systematic review and meta-analysis.
医療情報について
本記事は、査読済み論文、ランダム化臨床試験、システマティックレビューなどを参考に、歯科医師・毛利国安が監修しています。
エアフローや低研磨性パウダーであっても、天然歯・インプラント・すべての修復材料に対する影響が完全にゼロであることを保証するものではありません。
また、エアポリッシングはバイオフィルム管理の方法のひとつであり、進行した歯周病やインプラント周囲炎を単独で治療する方法ではありません。
使用する器具、パウダー、処置方法は、口腔内、歯周組織、インプラント、補綴材料などを確認したうえで個別に判断します。
監修:毛利 国安
歯科医師/PreBeau Oral Care 院長
大阪大学歯学部卒業
ミシガン大学 歯周病学分野 Postdoctoral Fellow
UCLA ACT Surgical Implant Dentistry Resident
元 霞が関デンタルオフィス院長
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