インプラントの被せ物が取れた・割れた・グラグラする|他院治療でも上部構造だけ交換できる?
Last Updated on 2 weeks ago by prebeau
「インプラントの被せ物が突然取れた」
「噛むとカタカタ動く」
「セラミックが欠けた・割れた」
「インプラントを入れた歯医者にはもう通えない」
「他院で入れたインプラントでも、被せ物だけ作り直してもらえる?」
インプラント治療後には、このような補綴物(被せ物・上部構造)のトラブルが起こることがあります。
重要なのは、
「インプラントが壊れた」と感じても、実際に問題がある場所は一つではない
ということです。
動いているのが、
- 被せ物だけなのか
- 固定しているスクリューなのか
- アバットメントなのか
- インプラント体そのものなのか
によって、必要な対応は大きく変わります。
条件が整えば、他院で埋入されたインプラントでも、上部構造だけの修理・再製作を検討できる場合があります。
PreBeau Oral Careでは新しいインプラントの埋入手術は行わず、他院で埋入されたインプラントのメンテナンス、インプラント周囲疾患への非外科的ケア、上部構造の相談に対応しています。
インプラントの「被せ物が取れた」とき、何が起きている?
患者さんから見ると、
「歯が取れた」
という一つの症状に見えます。
しかし、インプラントの上部構造には複数のパーツがあります。
一般的には、
顎の骨
↓
インプラント体
↓
アバットメントなどの接続部
↓
スクリューまたはセメント
↓
被せ物(上部構造)
という構造になっています。
そのため、被せ物が取れたり動いたりした場合には、どの部分に問題が起きているのかを診査することが最初のステップです。
1. 被せ物が完全に取れた
インプラントの被せ物が口の中から外れてしまうことがあります。
原因として考えられるものには、
- セメントの脱離
- スクリューの緩み
- スクリューの脱離
- 補綴物の破損
- アバットメント側のトラブル
などがあります。
取れた被せ物が残っている場合は、捨てずに歯科医院へ持参してください。
状態によっては再利用できることがあります。
ただし、必ず再装着できるわけではありません。
2. インプラントの被せ物がグラグラする
「インプラントがグラグラする」
という相談で非常に重要なのが、
本当にインプラント体そのものが動いているのか
という点です。
実際には、
- 被せ物だけが動いている
- アバットメントスクリューが緩んでいる
- 補綴物の一部が脱離している
ケースもあります。
インプラント補綴では、スクリューの緩みなどの**technical complication(技術的・機械的合併症)**が知られています。
インプラント支持単冠を対象としたシステマティックレビューでも、長期経過の中でスクリューやアバットメントの緩み、前装材料の破損などが報告されています。
Jung et al.|5-year survival and complication rates of implant-supported single crowns
したがって、
「動く=インプラントを抜かなければならない」
とは限りません。
まず、どこが動いているのかを確認します。
インプラント体そのものが動く場合は別問題
一方で、骨の中に入っているインプラント体そのものに明らかな動揺がある場合は、単なる被せ物の緩みとは異なります。
この場合には、
- オッセオインテグレーションの喪失
- 進行した骨支持の問題
- インプラント体や周囲組織の問題
などを評価する必要があります。
PreBeau Oral Careではインプラントの再埋入などの外科処置は行っていないため、外科的対応が必要と判断した場合には適切な医療機関へ紹介します。
3. セラミックが欠けた・割れた
インプラントの被せ物でも、長期間使用していると、
- セラミックのチッピング
- 前装材料の破折
- ジルコニアや補綴材料の破損
などが起こる場合があります。
近年のインプラント支持モノリシックセラミック補綴に関するレビューでも、全体として良好な生存率が報告される一方、
- screw loosening
- debonding
- minor chipping
などの補綴的合併症は報告されています。
Survival and prosthetic complications of monolithic ceramic implant-supported restorations
小さな欠けであれば修理可能なケースもあります。
一方、
- 大きく割れている
- 噛み合わせに問題がある
- 補綴物の設計自体を見直した方がよい
- 長期間使用して摩耗している
場合には、上部構造の再製作を検討することがあります。
4. スクリューが緩んでいる
スクリュー固定式やアバットメントスクリューを使用するインプラントでは、スクリューの緩みが起こることがあります。
原因は一つではなく、
- 接続構造
- 適切な締結トルク
- 補綴物の適合
- 咬合
- 補綴設計
- 経年的変化
など複数の要素が関係します。
過去のシステマティックレビューでも、適切に設計・締結された単独インプラントではスクリュー緩みは比較的少ないものの、臨床上認められる技術的合併症の一つとされています。
Abutment screw loosening in single-implant restorations
重要なのは、
緩んだスクリューを単に締め直せば終わりとは限らない
ということです。
なぜ緩んだのか、
- 被せ物が合っているか
- 咬合に問題がないか
- スクリュー自体に損傷がないか
- 接続部に問題がないか
を確認する必要があります。
自分で接着剤を使わないでください
被せ物が取れたとき、
「とりあえず瞬間接着剤で戻しておこう」
と考える方がいます。
これは避けてください。
家庭用接着剤は歯科用材料ではなく、その後の診査・修理を難しくする可能性があります。
また、原因がスクリューの緩みや破損だった場合、表面だけ固定しても問題は解決しません。
取れた被せ物は保管して、そのまま歯科医院へ持参してください。
グラグラする状態で噛み続けてもいい?
できるだけその部分に強い力をかけず、早めに診査を受けることをおすすめします。
緩んだ状態で繰り返し力が加わると、
- スクリュー
- 補綴物
- 接続部分
へ追加の負担がかかる可能性があります。
特に、
- 動きが大きい
- 痛みがある
- 腫れている
- 膿が出る
- 被せ物が外れそう
という場合には放置しない方がよいでしょう。
他院で治療したインプラントでも被せ物だけ交換できる?
条件が整えば検討できます。
重要なのは、
「誰が埋入したか」
だけではありません。
むしろ補綴物を修理・再製作する場合には、
どのインプラントシステムが使用されているか
が非常に重要です。
インプラントはメーカーごとに、
- 接続規格
- スクリュー
- アバットメント
- Ti-base
- スキャンボディ
- ドライバー
などが異なります。
そのため、他院で入れたインプラントを扱う場合には、まずシステムを確認します。
持ってきてほしいインプラント情報
可能であれば、
- インプラントカード
- メーカー名
- インプラントシステム名
- インプラント径
- プラットフォーム
- 接続規格
- 治療時の資料
- 過去のレントゲン
- 海外で治療した場合は英語の治療記録
などをお持ちください。
情報が揃っているほど、必要な補綴部品を確認しやすくなります。
メーカーが分からない場合は?
メーカー情報が分からなくても、まず診査することは可能です。
レントゲン画像の形態などからインプラントシステムを推定できるケースもあります。
近年では、歯科用エックス線画像からインプラントシステムを識別するAIについても研究が進み、2024年のシステマティックレビューでは高い分類精度が報告されています。
Advancements in artificial intelligence algorithms for dental implant identification
ただし、これは
「画像を見れば必ずメーカーが分かる」
という意味ではありません。
似た形態の製品もあります。
補綴部品を使用する場合には、可能な限り確実なシステム確認が必要です。
まず以前の歯科医院へ問い合わせて、使用したインプラント情報を取り寄せることをおすすめします。
他院で入れたインプラントの転院・メンテナンスについて詳しく見る
被せ物だけ作り直せるかを判断するときに見るポイント
上部構造だけ再製作できるかは、
- インプラント体が安定しているか
- 周囲に進行した炎症がないか
- 骨支持に問題がないか
- 接続部が損傷していないか
- インプラントシステムを確認できるか
- 必要な部品を入手できるか
- 埋入位置・角度
- 噛み合わせ
- 補綴スペース
などから判断します。
したがって、
「被せ物だけ壊れたから、必ず被せ物だけ交換できる」
とは限りません。
まずインプラント全体の状態を確認します。
同じ被せ物を再装着するか、新しく作り直すか
トラブルがあったからといって、すべて作り直す必要があるわけではありません。
状態によっては、
- 再装着
- スクリュー交換
- 修理
- 一部補修
で対応できる場合があります。
一方で、
- 補綴物自体が破損している
- 適合に問題がある
- 清掃性が悪い
- 食片が入りやすい
- 噛み合わせを大きく変更する必要がある
- 長期使用で補綴物が劣化している
場合には再製作を検討します。
作り直すなら「以前と同じ形」でなくてもよい?
ここも重要です。
現在の被せ物が清掃しにくい場合には、
単純に同じ形の被せ物をコピーすることが最善とは限りません。
例えば、
- フロスが通らない
- 歯間ブラシが入らない
- 歯ぐき側が過度に張り出している
- 食べ物が停滞しやすい
という問題があるなら、上部構造を再製作する機会に清掃性を含めて形態を見直すことがあります。
インプラント周囲疾患の長期管理では、患者さん自身が清掃できる補綴設計が重要です。
PreBeau Oral Careでは可能ならスクリュー固定を検討
上部構造を新しく作製する場合、PreBeau Oral Careでは条件が許せば**スクリュー固定(screw-retained)**を基本的な選択肢として考えています。
理由は、
必要になったときに再アクセスしやすいこと
です。
スクリュー固定では、上部構造へのアクセスホールからスクリューへ到達できるため、
- 上部構造を外す
- スクリューを確認する
- 修理する
- 周囲組織を確認する
といった対応を行いやすいことがあります。
システマティックレビューでも、スクリュー固定の大きな特徴として**retrievability(撤去・再アクセス性)**が挙げられています。
Sailer et al.|Cemented and screw-retained implant reconstructions
ただし、
スクリュー固定がすべての症例で優れているわけではありません。
インプラントの位置・角度、審美性、使用できる補綴部品などによってセメント固定など他の方法が適切な場合もあります。
固定方法について詳しくは、他院でインプラントを埋入したけれど被せ物がまだの方へ|上部構造だけの作製とスクリュー固定をご覧ください。
被せ物のトラブルとインプラント周囲炎が同時に起きることもある
被せ物が動いているからといって、問題が補綴物だけとは限りません。
同時に、
- 出血
- 腫れ
- 排膿
- 深いプロービングデプス
- 骨吸収
などが認められることもあります。
そのためPreBeau Oral Careでは、被せ物を診るときにもインプラント周囲組織を同時に評価します。
出血・腫れ・膿・臭いについては、インプラント周囲炎の初期症状とは?をご覧ください。
また、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の違いでも非外科的治療と外科治療の考え方を解説しています。
被せ物を直した後もメンテナンスが重要
上部構造を修理または再製作したあとも、
- スクリュー
- 被せ物
- 清掃性
- プロービング時出血
- 排膿
- プラーク
- 必要に応じた骨の状態
- 噛み合わせ
を定期的に確認します。
つまり、
被せ物を交換して終わり
ではありません。
新しい補綴物をその後どう維持できるかまで考えることが大切です。
インプラントのメンテナンスは何をする?頻度・クリーニング・自宅ケアと周囲炎予防
PreBeau Oral Careで相談できるケース
PreBeau Oral Careでは、新規のインプラント埋入手術は行っていません。
一方で、すでに入っているインプラントについて、
- 他院で入れたインプラントの被せ物が取れた
- 被せ物が割れた
- インプラントの歯がグラグラする
- スクリューの緩みが疑われる
- 被せ物だけ作り直したい
- 清掃しにくい上部構造を見直したい
- 埋入した医院へ通えなくなった
- 海外で入れたインプラントを日本で診てもらいたい
といった相談に対応しています。
インプラントカードやメーカー情報がある場合にはお持ちください。
現在のインプラント、周囲組織、使用されているシステムを確認したうえで、
修理できるのか、上部構造を再製作した方がよいのか、あるいは別の専門的対応が必要なのか
を判断します。
東京・赤坂|他院インプラントのメンテナンス・上部構造・被せ物の相談
本記事の執筆・監修について
本記事を執筆・監修する毛利国安は、大阪大学歯学部卒業後、University of Michiganの歯周病学分野でポスドク研究員を経験し、UCLA ACT Surgical Implant Dentistry Residentとしてインプラント臨床研修を行っています。
ICOI Fellowとして、インプラント補綴・インプラント周囲疾患に関連する書籍の翻訳・執筆にも携わっています。
また、
(Alberto Monje・Hom-Lay Wang編、クインテッセンス出版)の日本語版では翻訳統括を担当しています。
これらの経歴は個別の治療結果を保証するものではありませんが、インプラントを埋入する外科処置だけでなく、その後の補綴・メンテナンス・周囲組織の管理まで含めて評価する診療方針の背景になっています。
まとめ|「被せ物の問題」か「インプラント本体の問題」かをまず確認する
インプラントの被せ物が、
- 取れた
- 割れた
- グラグラする
- 噛みにくい
場合でも、原因は一つではありません。
考えられるのは、
被せ物
スクリュー
アバットメント
接続部分
インプラント体
周囲組織
などです。
したがって、
「インプラントがダメになった」とすぐ判断する必要はありません。
他院で治療されたインプラントでも、インプラントシステムを確認でき、インプラント体や周囲組織が安定していれば、上部構造だけの修理・再製作を検討できる場合があります。
一方、インプラント体そのものの動揺や進行した骨吸収などがある場合には、補綴物だけを直しても解決できません。
まず現在の状態を正しく確認することが重要です。
他院で入れたインプラントの被せ物・メンテナンスについて詳しく見る
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参考文献
- Jung RE, et al. A systematic review of the 5-year survival and complication rates of implant-supported single crowns. Clinical Oral Implants Research.
- Theoharidou A, et al. Abutment screw loosening in single-implant restorations: a systematic review. International Journal of Oral & Maxillofacial Implants.
- Zembic A, et al. Systematic review of the survival rate and the incidence of biological, technical, and aesthetic complications of single crowns on implants.
- Sailer I, et al. Cemented and screw-retained implant reconstructions: a systematic review of the survival and complication rates. Clinical Oral Implants Research.
- Survival and prosthetic complications of monolithic ceramic implant-supported single crowns and fixed partial dentures: A systematic review with meta-analysis. Journal of Prosthetic Dentistry.
- Advancements in artificial intelligence algorithms for dental implant identification: A systematic review with meta-analysis. Journal of Prosthetic Dentistry.
- インプラント周囲炎を紐解く―診断・予防・管理のすべて|CiNii Books
執筆・監修:毛利 国安
歯科医師/PreBeau Oral Care 院長
UCLA ACT Surgical Implant Dentistry Resident修了・ICOI Fellow
※本記事は一般的な歯科医療情報を提供するもので、個別の診断を目的とするものではありません。他院で埋入されたインプラントの上部構造を修理・再製作できるかは、使用されているインプラントシステム、補綴部品の入手可否、インプラント体・接続部・周囲組織の状態などによって異なります。