歯周病菌を減らすには?プロフェッショナルクリーニングと抗菌水の考え方
Last Updated on 2 days ago by prebeau
「歯周病菌を殺菌すれば、歯周病は予防できるのでしょうか?」
「抗菌作用のあるオゾン水を使えば、歯周病菌を減らせますか?」
「歯科医院でクリーニングを受ける意味は何ですか?」
歯周病について調べると、「殺菌」「抗菌」「歯周病菌を減らす」といった言葉をよく目にします。
しかし、歯周病の予防やメンテナンスで重要なのは、
口の中の細菌をすべて殺菌することではありません。
大切なのは、
- 歯や歯周ポケット周囲に蓄積したバイオフィルムを管理する
- 歯肉の炎症を抑える
- 患者様自身のセルフケアを改善する
- 必要に応じて歯石を除去する
- 定期的に歯周組織を評価する
という継続的な管理です。
東京・赤坂のPreBeau Oral Careでは、GBT・エアフローなどによるプロフェッショナルなバイオフィルム管理を基本とし、必要に応じて5ppmオゾン水を抗菌的な補助アプローチとして使用しています。
監修:歯科医師 毛利 国安
PreBeau Oral Care 院長
歯周病は「特定の菌がいるだけ」で起こる病気ではありません
歯周病には、
- Porphyromonas gingivalis
- Tannerella forsythia
- Treponema denticola
- Fusobacterium nucleatum
など、複数の細菌が関係することが知られています。
しかし、
「歯周病菌が1種類存在する=歯周病になる」
という単純な仕組みではありません。
口腔内には非常に多くの微生物が存在し、それらが複雑な微生物コミュニティを形成しています。
健康な口腔内でもさまざまな細菌が存在します。
問題になるのは、プラーク・バイオフィルムが蓄積し、微生物のバランスが崩れ、宿主側の炎症反応などと組み合わさることで、歯周組織の破壊につながる状態です。
そのため、現代の歯周病管理では、
「菌をゼロにする」ことより、「病的なバイオフィルム環境をコントロールする」
という考え方が重要です。
歯周病菌はどこに存在する?
歯周病関連細菌は、単独で歯の表面に浮いているわけではありません。
多くは、
デンタルバイオフィルム
と呼ばれる構造の中に存在しています。
バイオフィルムは、
- 細菌
- 多糖類
- タンパク質
- 細胞外DNA
- 細菌が作るマトリックス
などから構成される複雑な構造です。
歯の表面や歯肉縁付近、歯周ポケット内部などに付着します。
このため、
抗菌成分を作用させること
と
付着しているバイオフィルムそのものを取り除くこと
は同じではありません。
この違いについては前の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:バイオフィルム除去と抗菌は別物?エアフローとオゾン水の役割を解説
歯周病管理の基本は「機械的なバイオフィルム除去」
European Federation of Periodontology(EFP)のStage I〜III歯周炎に対するS3レベル臨床ガイドラインでは、歯周治療後のSupportive Periodontal Careにおいて、
Professional Mechanical Plaque Removal(PMPR)
つまり、
歯科医療従事者による機械的なプラーク・バイオフィルム除去
が推奨されています。
重要なのは、
「抗菌剤を使うこと」
がメンテナンスの中心ではなく、
まず機械的にバイオフィルムを管理することが基本
という点です。
さらに、
- 患者様自身による歯みがき
- 歯間ブラシなどによる歯間清掃
- 定期的な歯周組織の評価
- リスク因子の管理
- プロフェッショナルクリーニング
を継続的に行うことが重要です。
なぜ歯科医院でのクリーニングが必要?
毎日の歯みがきは、歯周病予防の中心です。
しかし、セルフケアだけでは、
- 歯と歯の間
- 歯肉縁周囲
- 歯列不正がある部分
- 奥歯
- 被せ物周囲
- インプラント周囲
などにバイオフィルムが残ることがあります。
さらに、プラークが石灰化すると歯石になります。
歯石は歯ブラシでは除去できません。
そのため、歯科医院では、
- 歯周組織を確認する
- バイオフィルムの付着部位を確認する
- 必要に応じて染め出す
- バイオフィルムを除去する
- 歯石があれば除去する
- セルフケア方法を確認する
- 定期的に再評価する
という管理を行います。
エアフローは歯周病菌を「殺菌する機械」ではありません
エアフローは、
- 水
- 圧縮空気
- 微細なパウダー
を利用して、歯面などに付着したバイオフィルムを物理的に除去する方法です。
その目的は、
特定の細菌を化学的に殺菌することではありません。
重要なのは、
細菌が存在するバイオフィルムを歯面から物理的に減らすこと
です。
PreBeau Oral CareではGBT(Guided Biofilm Therapy)の考え方を取り入れ、必要に応じてバイオフィルムを染め出して可視化したうえで処置を行います。
これにより、
「どこをきれいにしたか」
だけでなく、
患者様自身がどこに磨き残しやすいか
も確認できます。
では「抗菌水」にはどのような役割がある?
抗菌作用を持つ液体には、
- クロルヘキシジン
- オゾン水
- その他の抗菌成分
などがあります。
これらは特定の条件下で細菌の生存性を低下させる可能性があります。
しかし、
抗菌作用があることと、歯周病が予防・治療できることは同じではありません。
ここは非常に重要です。
例えば、
ある細菌に対してin vitroで高い抗菌作用が認められた
という研究結果があったとしても、
それだけで、
「患者様の歯周病が改善する」
とは言えません。
オゾン水には歯周病関連細菌への抗菌作用を示す基礎研究があります
オゾン水については、口腔関連細菌を対象とした基礎研究があります。
2023年にTakizawaらが報告した研究では、4〜6ppmのオゾン・ウルトラファインバブル水が、
- Porphyromonas gingivalis
- Fusobacterium nucleatum
- Prevotella intermedia
- Streptococcus mutans
- Streptococcus sobrinus
などに対して検討されました。
この実験では、浮遊状態の細菌に対して短時間で高い抗菌作用が認められています。
PreBeau Oral Careで使用している5ppmオゾン水は、この研究で使用された4〜6ppmの濃度範囲に含まれます。
しかし、この結果は主としてin vitroの浮遊菌を対象とした基礎研究です。
実際の患者様の歯周ポケット内部に形成された成熟バイオフィルムに同じ作用が得られることを意味するものではありません。
オゾン水を使えば歯周病菌を除去できる?
「除去」という表現には注意が必要です。
オゾン水には抗菌作用を示す研究がありますが、
オゾン水によってバイオフィルムそのものを物理的に取り除くわけではありません。
2026年に口腔Streptococcus属を対象として行われた基礎研究でも、オゾン水を含む消毒剤によって細菌の生存性には変化がみられた一方、短時間の処理によるバイオフィルムそのものの除去は限定的でした。
したがって、
抗菌
=
バイオフィルム除去
ではありません。
オゾン水を歯周治療に追加した臨床研究もあります
オゾン水は基礎研究だけでなく、歯周病患者を対象とした臨床研究も行われています。
例えば、機械的な歯周治療にオゾン水による洗浄を追加したランダム化比較試験では、
- プラーク
- 歯肉出血
- 歯周ポケット
- 臨床的アタッチメント
などについて検討されています。
一部の研究では、オゾン水を追加した群で改善が大きかった項目が報告されています。
しかし、ここで重要なのは、
「オゾン水単独」で治療しているわけではない
ということです。
基本となっているのは、
機械的なデブライドメント・歯周治療
です。
そのうえでオゾン水を追加しています。
2025年の研究でも「差はあるが臨床的意味は限定的」と評価
2025年に報告された非外科的歯周治療の研究では、
機械的な歯周治療にオゾン水を追加した群と通常の治療群を比較しています。
両群とも臨床的改善を示し、オゾン水群では一部の時点・指標で統計学的により良好な結果が認められました。
しかし研究者自身も、
その差の大きさは限定的で、臨床的な重要性は大きくない可能性がある
としています。
つまり、
「統計学的に差がある」
ことと、
「患者様にとって明確に大きな治療効果がある」
ことは別に考える必要があります。
過去のsystematic reviewでは明確な追加効果が確認されなかった
一方、2020年に発表されたランダム化比較試験のsystematic review / meta-analysisでは、
スケーリング・ルートプレーニングにオゾン療法を追加しても、歯周臨床指標に統計学的に有意な追加効果は確認されなかった
と報告されています。
また、
オゾン水を追加した場合とクロルヘキシジンを追加した場合の間にも明確な差は認められませんでした。
これは、
オゾン水が全く作用しない
という意味ではありません。
研究方法、濃度、使用方法、患者背景、評価期間などが異なるため、結果にはばらつきがあります。
現時点では、
歯周治療にオゾン水を追加すると長期的な治療成績が明確に向上する、と断定できるだけのエビデンスはありません。
2026年のsystematic reviewでもエビデンスの確実性は低い
2026年には、オゾン水によるプラークコントロールについてのsystematic review / meta-analysisも発表されています。
5研究が定性的評価に含まれ、そのうち4研究がmeta-analysisに使用されました。
オゾン水はプラセボまたはクロルヘキシジンと比較して、短期的なプラーク減少について良好な傾向を示しました。
しかし、統計学的に明確な差には至らず、
エビデンスの確実性はlow
と評価されています。
したがって、
オゾン水を使用すればプラークや歯周病を確実に予防できる
という説明は現時点では適切ではありません。
「抗菌力が高いものを使えばいい」という考え方ではありません
歯周病管理で重要なのは、
最も強い殺菌剤を使うこと
ではありません。
口腔内には正常な常在微生物も存在します。
また、歯周病の発症・進行には、
- バイオフィルム
- 喫煙
- 糖尿病
- セルフケア
- 遺伝的要因
- 加齢
- 歯周ポケット
- 歯石
- 修復物の形態
- メンテナンス頻度
など、さまざまな要因が関係します。
そのため、
「抗菌水を使っているから歯周病にならない」
と考えることはできません。
クロルヘキシジンとオゾン水はどちらがいい?
クロルヘキシジンは、プラークコントロールを目的とした抗菌剤として長く研究されてきました。
一方で、長期間の使用などでは、
- 歯や舌の着色
- 味覚への影響
- 粘膜への刺激
などが問題になることがあります。
オゾン水は、こうした化学的抗菌剤とは異なる特徴を持つため、歯科領域で研究されています。
しかし、
オゾン水がクロルヘキシジンより優れていることが確立されているわけではありません。
使用目的や患者様の状態によって考える必要があります。
PreBeau Oral Careでは「抗菌より先にバイオフィルム管理」
PreBeau Oral Careでは、歯周病予防やメンテナンスにおいて、
1.歯周組織を評価する
歯肉の状態、出血、歯周ポケット、プラーク、歯石などを確認します。
2.バイオフィルムを確認する
必要に応じて染め出しを行い、付着部位を可視化します。
3.GBT・エアフロー
歯面に付着したバイオフィルムを物理的に管理します。
4.必要な歯石を除去する
硬く付着した歯石には適切な器具を使用します。
5.必要に応じて5ppmオゾン水
口腔関連細菌に対する抗菌作用を期待する補助的な方法として使用します。
6.セルフケアを確認する
歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシなどについても確認します。
7.定期的に再評価する
歯周病リスクに応じてメンテナンス間隔を考えます。
歯周病菌を減らすために最も重要なのは毎日のセルフケア
どれだけ歯科医院できれいにしても、その後まったく歯を磨かなければバイオフィルムは再び形成されます。
そのため歯周病予防では、
毎日のセルフケアが基本
です。
特に歯周病では、
歯ブラシだけでなく、
- 歯間ブラシ
- デンタルフロス
- 患者様に適した補助清掃器具
を使用することが重要です。
EFPのガイドラインでも、歯周メンテナンスにおいて歯間清掃の重要性が示されています。
「歯周病菌ゼロ」を目標にしない
歯科メンテナンスの目的は、
口腔内を無菌状態にすることではありません。
目標は、
- バイオフィルムの蓄積を抑える
- 歯肉の炎症を管理する
- 歯周ポケットの悪化を防ぐ
- 歯周組織を定期的に評価する
- 天然歯を長く維持する
- インプラントや修復物を良好な状態に維持する
ことです。
「何%殺菌できるか」という数字だけでは、歯周病予防の質は判断できません。
歯周病菌を減らすなら「機械的除去+セルフケア」が基本
現在のエビデンスから考えると、
歯周病管理の中心は、
① 患者様自身のセルフケア
と
② 歯科医院での機械的なバイオフィルム・プラーク管理
です。
オゾン水などの抗菌的アプローチは、
必要に応じて追加する補助的方法
として考えるのが適切です。
これは、
「オゾン水に意味がない」
ということではありません。
基礎研究では口腔関連細菌に対する抗菌作用が報告され、一部の臨床研究でも有望な結果があります。
ただし、
抗菌作用があることと、長期的に歯周病の進行を抑えられることは別のエビデンス
です。
まとめ|歯周病菌を「殺す」より、バイオフィルムを「管理する」
歯周病予防で重要なのは、
「歯周病菌を完全に殺菌すること」ではありません。
重要なのは、
- 毎日の歯みがき
- 歯間清掃
- プロフェッショナルなバイオフィルム除去
- 必要な歯石除去
- 歯周組織の定期的評価
- 患者様ごとのリスク管理
を継続することです。
オゾン水には口腔関連細菌への抗菌作用を示す基礎研究があり、一部の臨床研究でも補助的な効果が報告されています。
一方で、systematic reviewでは結果にばらつきがあり、
機械的な歯周治療やプロフェッショナルクリーニングを置き換えられるものではありません。
PreBeau Oral Careでは、
GBT・エアフローなどによる物理的なバイオフィルム管理を基本とし、必要に応じて5ppmオゾン水を補助的に使用する
という考え方でメンテナンスを行っています。
歯周病予防では、
「何で殺菌するか」ではなく、「バイオフィルムをどう継続的に管理するか」
を考えることが大切です。
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参考文献
Sanz M, Herrera D, Kebschull M, et al.
Treatment of stage I–III periodontitis—The EFP S3 level clinical practice guideline.
Journal of Clinical Periodontology. 2020.
Mohandas R, Mohapatra S, Poothakulath Krishnan R.
Ozonated water as a preventive oral hygiene aid: a systematic review and meta-analysis of its role in reducing dental plaque.
Evidence-Based Dentistry. 2026.
PMID: 42542467
Kaur A, et al.
Adjunctive benefit of ozonized water irrigation with mechanical debridement in the management of Stage III periodontitis: A randomized controlled clinical and biochemical study.
International Journal of Dental Hygiene. 2021.
PMID: 34420261
Effect of Ozonated Water in Nonsurgical Management of Periodontitis.
Clinical and Experimental Dental Research. 2025.
PMID: 40919644
Ineffectiveness of ozone therapy in nonsurgical periodontal treatment: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials.
2020.
PMID: 32399735
Takizawa F, et al.
Ozone ultrafine bubble water exhibits bactericidal activity against pathogenic bacteria in the oral cavity and upper airway and disinfects contaminated healthcare equipment.
PLoS One. 2023.
PMID: 37043490
医療情報について
本記事は、歯周病に関する臨床ガイドライン、systematic review、meta-analysis、ランダム化比較試験および基礎研究を参考に、歯科医師・毛利国安が監修しています。
オゾン水の抗菌作用を示す研究の一部は、実験室内で特定の細菌を対象としたin vitro研究です。
実験室内で認められた抗菌作用が、実際の患者様の口腔内や成熟した歯周バイオフィルムで同じ程度に得られることを意味するものではありません。
また、歯周病患者を対象とした臨床研究では、オゾン水を機械的歯周治療に追加した場合に一部の臨床指標で改善を示した研究がある一方、systematic reviewでは明確な追加効果が確認されていない報告もあります。
したがって、現時点ではオゾン水単独によって歯周病を予防・治療できる、あるいは通常の機械的歯周治療より優れていると断定することはできません。
歯周病の予防・治療では、歯周組織の診査、患者様自身によるプラークコントロール、専門的な機械的バイオフィルム管理、必要な歯石除去、定期的な再評価などを組み合わせることが重要です。
監修:毛利 国安
歯科医師/PreBeau Oral Care 院長
大阪大学歯学部卒業
ミシガン大学 歯周病学分野 Postdoctoral Fellow
UCLA ACT Surgical Implant Dentistry Resident
元 霞が関デンタルオフィス院長
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