歯ぎしり・食いしばりからインプラントやセラミックを守るには?噛む力への対策
Last Updated on 1 week ago by prebeau
「インプラントを入れたけれど、歯ぎしりが強いと言われた」
「せっかく入れたセラミックが欠けないか心配」
「インプラントがある人はナイトガードをしたほうがいい?」
「食いしばりがあるとインプラントは長持ちしない?」
インプラントやセラミック治療を受けたあと、
治療した歯をどう長く守るか
は非常に重要です。
インプラントもセラミックも、適切に治療・管理されれば長期間使用できる可能性があります。
一方で、
- 歯ぎしり
- 食いしばり
- 強い咬合力
がある場合には、補綴物に加わる機械的な負担についても考える必要があります。
近年のsystematic reviewやmeta-analysisでは、ブラキシズムのある患者では、インプラント支持補綴装置の機械的合併症やインプラント失敗のリスクが高いことが報告されています。
ただし、
「歯ぎしりがある=必ずインプラントが失敗する」
という意味ではありません。
また、
「マウスピースを入れればすべて防げる」
と断定できるわけでもありません。
重要なのは、
治療後も、清掃と炎症の管理だけでなく「力」も継続して管理すること。
この記事では、歯ぎしり・食いしばりがインプラントやセラミックにどのような影響を与える可能性があるのか、そして歯や補綴物を守るためにできることを歯科医師が解説します。
インプラントやセラミックは「入れたら終わり」ではありません
インプラントやセラミック治療では、治療直後の見た目や噛みやすさだけではなく、
その状態を長期間維持できるか
が重要です。
そのためには、大きく分けて、
細菌・炎症の管理
- 歯磨き
- 歯間清掃
- プラークコントロール
- 歯周病管理
- インプラント周囲組織の管理
- 定期的なクリーニング
と、
力の管理
- 歯ぎしり
- 食いしばり
- 噛み合わせ
- 補綴物への負担
- インプラントへの負担
の両方を考える必要があります。
きれいに磨けていても、強い力による機械的トラブルが起こることがあります。
逆に、噛む力だけ管理しても、プラークコントロールが悪ければインプラント周囲炎などの問題につながる可能性があります。
「細菌」と「力」の両方を見ることが大切です。
歯ぎしり・食いしばりとは?
現在の国際コンセンサスでは、ブラキシズムは単純に「歯をギリギリする病気」とは定義されていません。
睡眠中に起こるものを、
睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism)
起きている間に起こるものを、
覚醒時ブラキシズム(Awake Bruxism)
と分けて考えます。
睡眠時ブラキシズムでは、睡眠中にリズミカルまたは非リズミカルな咀嚼筋活動が生じます。
覚醒時ブラキシズムでは、
- 歯を接触させ続ける
- 食いしばる
- 顎に力を入れる
- 下顎を固定する
などの行動が含まれます。
そして、ブラキシズムは必ずしもすべての人で「疾患」と考えるものではなく、
臨床的な結果に対するリスク因子になり得る行動
として評価することが重要です。
なぜ「噛む力」がインプラントで問題になる?
天然歯とインプラントは、構造が同じではありません。
天然歯の根の周囲には、
歯根膜
という組織があります。
一方、インプラントは骨と直接的に結合するオッセオインテグレーションによって支持されます。
つまり、天然歯とインプラントでは力を受ける仕組みが異なります。
そのためインプラント治療では、
- 噛み合わせ
- 補綴物の形
- インプラントの位置
- 本数
- 骨の状態
- 咬合力
- ブラキシズム
などを考慮して設計します。
歯ぎしりがあるとインプラントは失敗しやすい?
最近の研究では、関連が示されています。
2023年に発表されたsystematic review・meta-analysisでは、probable bruxism(ブラキシズムの可能性が高い患者)では、非ブラキサーよりインプラント失敗リスクが有意に高いことが報告されています。
さらに2024年以降のsystematic review・meta-analysisでも、ブラキシズム患者でインプラント失敗リスクの上昇が報告されています。
2026年のumbrella reviewでは、それまでに発表された複数のsystematic reviewをまとめ、
最近の研究ではブラキシズムがインプラント支持補綴装置の失敗に関係する重要なリスク因子として示されている
としています。
ただし、研究間にはばらつきがあります。
したがって、
「歯ぎしりがある人にはインプラントができない」
という意味ではありません。
より正確には、
インプラント治療後に力の管理を考えるべきリスク因子の一つ
と考えるのが適切です。
インプラント本体より「上の歯」が壊れることもある
インプラント治療では、
「インプラントが抜けるかどうか」
だけに注目しがちです。
しかし実際には、インプラント支持補綴ではさまざまな機械的合併症があります。
例えば、
- セラミックのチッピング
- 人工歯の摩耗・破折
- スクリューの緩み
- スクリューの破折
- アバットメントの破折
- 補綴物の動揺
- フレームワークの破損
- まれにインプラント体の破折
などです。
2025年に発表されたsystematic review・meta-analysisでは、ブラキシズム患者で、
セラミック破折、スクリュー緩み、スクリュー破折、アバットメント破折など複数の機械的合併症のリスク上昇
が報告されています。
これは、
インプラントを守る=インプラント本体だけを見ることではない
ということを意味します。
上部構造まで含めて長期的に管理することが必要です。
スクリューが何度も緩む場合は?
インプラントの被せ物には、スクリューで固定されているタイプがあります。
一度スクリューが緩んだからといって、必ずブラキシズムが原因とは限りません。
- 補綴設計
- 適合
- 締結トルク
- 咬合
- インプラントの位置
- 補綴物の形態
など、複数の要因が関係します。
しかし、
繰り返しスクリューが緩む
場合には、咬合力やブラキシズムも確認する価値があります。
「また締めればいい」
だけではなく、
なぜ繰り返しているのか
を考えることが重要です。
セラミックは歯ぎしりで割れる?
可能性はあります。
ただし、ここも単純ではありません。
セラミック修復物の破損には、
- 材料
- セラミックの厚み
- 接着
- 支台歯
- 修復物の設計
- 噛み合わせ
- 咬合力
- ブラキシズム
など、多くの要因が関係します。
2018年のsystematic review・meta-analysisでは、前歯のセラミックベニアについては睡眠時ブラキシズムとの関連が示唆されました。
一方で、セラミック修復物全体ではブラキシズムによる失敗増加を明確に証明できず、エビデンスの質も非常に低いとされています。
したがって、
「歯ぎしりをする人はセラミックが必ず割れる」
とは言えません。
逆に、
「セラミックだから強いので何をしても大丈夫」
とも言えません。
ジルコニアなら歯ぎしりしても大丈夫?
これもよくある質問です。
ジルコニアは高い強度を持つ歯科材料ですが、
強い材料を選べば力の問題を考えなくてよい
わけではありません。
補綴物の長期予後には、
- 材料
- 厚さ
- 支台歯形成
- 接着
- 咬合
- 補綴設計
- 対合歯
- 患者さんのブラキシズム
などが関係します。
材料選択だけで問題を解決するのではなく、口腔全体で考える必要があります。
「硬いセラミックなら天然歯のほうが削れる」ことも考える
補綴物だけではなく、対合する天然歯も確認する必要があります。
強い咬合力がある場合には、
「被せ物が壊れていないから大丈夫」
ではなく、
反対側の天然歯が摩耗していないか。
他の歯に負担が移っていないか。
も見ていきます。
補綴治療では、
一本の歯だけではなく口腔全体で力を評価する
ことが重要です。
インプラントがある人は全員ナイトガードが必要?
必ずしも全員ではありません。
インプラントが入っているというだけで、
すべての患者さんに咬合スプリントを処方すべき
という強いエビデンスが確立しているわけではありません。
考えるべきなのは、
- ブラキシズムが疑われるか
- 歯の摩耗があるか
- 修復物の破損歴があるか
- インプラント補綴の範囲
- 咬合力
- 対合歯
- 顎関節
- 補綴設計
などです。
つまり、
インプラントがあるからマウスピース
ではなく、
その患者さんにどの程度「力のリスク」があるのか
を評価します。
ナイトガードはインプラントの破損を完全に防げる?
ここも重要です。
咬合スプリントは、歯や補綴物への直接的な接触や力を管理する方法として使用されます。
最近の研究では、インプラント支持補綴物のブラキシズム患者で保護用スプリントの有用性を示唆する報告があります。
しかし、
ナイトガードを装着すればインプラント失敗を確実に防止できる
というレベルのエビデンスが確立しているわけではありません。
そのため、スプリントは、
リスク管理の一つ
として考えることが適切です。
ナイトガードを作ればメインテナンスはいらない?
もちろん違います。
インプラントを守るには、
炎症の管理
- プラークコントロール
- 歯周組織の確認
- インプラント周囲組織の確認
- 定期的なメインテナンス
機械的な管理
- 咬合
- 補綴物
- スクリュー
- セラミック
- ブラキシズム
- 咬合スプリント
の両方が必要です。
マウスピースは、毎日のセルフケアや定期的な歯科メインテナンスの代わりにはなりません。
歯ぎしり用マウスピースは何を守っている?
例えば睡眠中に強い力がかかる患者さんでは、上下の歯の間に咬合スプリントを介在させます。
これにより、
天然歯や補綴物が直接接触する状況を変える
ことができます。
使用しているうちに装置表面が摩耗することがあります。
その場合、
「マウスピースが削れてしまった」
と心配になるかもしれません。
しかし、歯科医師としてはその摩耗自体も、
どのように力がかかっているのかを見る情報
になります。
マウスピースがすぐ削れる人は歯ぎしりが強い?
装置の摩耗は一つの情報になりますが、
マウスピースの摩耗量だけでブラキシズムの重症度を正確に診断することはできません。
装置の材料。
厚み。
使用期間。
咬合。
装着時間。
などによっても摩耗量は変わります。
歯の摩耗と同じように、
一つの所見だけで判断しない
ことが重要です。
大人のプレオルソはインプラント・セラミックの保護に使える?
PreBeau Oral Careで扱う**大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)**は、患者さんごとに技工する歯科用咬合スプリントです。
メーカーであるフォレスト・ワンでは、
- 歯ぎしり・食いしばりによる補綴物の保護
- インプラントへの過度な負担への対応
- 顎関節への負担軽減
- 矯正後の保定
などへの活用が示されています。
そのため、
- 多数のセラミックが入っている
- インプラントが入っている
- 歯ぎしり・食いしばりが疑われる
- 補綴物の保護を考えたい
場合には、選択肢の一つとして検討することがあります。
ただし、
「プレオルソを使用すればインプラントが絶対に壊れない」
という意味ではありません。
普通のナイトガードと大人のプレオルソ、どちらがいい?
これは「どちらが上」という比較ではありません。
目的や口腔内の状態によって選択します。
例えば、
- 守りたい歯や補綴物
- インプラントの位置
- 歯列
- 噛み合わせ
- 顎関節
- 矯正後かどうか
- 装着感
- 使用目的
などを考えます。
大切なのは商品名ではなく、
この患者さんにはなぜこの装置を使うのか
という理由です。
インプラントに歯ぎしりの跡は見える?
天然歯であれば、
- 摩耗
- ファセット
- 欠け
- 亀裂
などが見られることがあります。
インプラントではさらに、
- セラミックのチッピング
- 人工歯の摩耗
- スクリュー緩み
- 補綴物の破損
- 補綴物の動揺
などが、強い機械的負担を考えるきっかけになることがあります。
ただし、これらがあるからといって必ずブラキシズムが原因とは限りません。
インプラント治療前から「力」を評価することも大切
理想的には、
インプラントが壊れてから力を考えるのではなく、治療前から考える
ことが重要です。
例えば、
- 強い摩耗がある
- 歯が繰り返し割れている
- セラミックの破折歴がある
- 日中の食いしばりが強い
- 睡眠時ブラキシズムが疑われる
患者さんでは、その情報をインプラント治療計画にも反映します。
インプラントの本数。
位置。
補綴設計。
材料。
咬合。
メインテナンス。
必要に応じた咬合スプリント。
まで含めて考えます。
「何度治しても同じ場所が壊れる」ときは原因を考える
例えば、
セラミックが欠けた。
また新しく作った。
また欠けた。
という場合、
毎回材料だけを交換していても、同じ問題を繰り返す可能性があります。
もちろん材料・設計などの問題もありますが、
力のかかり方を確認すること
も重要です。
PreBeau Oral Careでは、
「壊れたから治す」
だけではなく、
「なぜ壊れたのか」
を見ることを大切にしています。
日中の食いしばりならマウスピースだけでは不十分なことも
もし主な問題が覚醒時ブラキシズムなら、
マウスピースを作るだけではなく、
「自分がいつ食いしばっているのか」
に気づくことが重要になります。
パソコン中。
スマートフォン中。
運転中。
集中しているとき。
緊張しているとき。
一日に何度か、
「今、上下の歯は接触していない?」
と確認することも対策の一つです。
装置による保護と、行動へのアプローチは分けて考えます。
睡眠時ブラキシズムなら「完全に止める」ことを目標にしない場合も
睡眠時ブラキシズムは、本人が眠っている間に起こる咀嚼筋活動です。
現在の科学的知見では、
全員の睡眠時ブラキシズムを確実かつ永久に消失させる単一の方法
があるわけではありません。
そのため臨床では、
ブラキシズムをゼロにすること
だけではなく、
ブラキシズムがあっても歯や補綴物へのダメージをできるだけ減らすこと
を考えます。
セラミックやインプラントを長持ちさせるために確認したいこと
治療後には、次のような点を確認していくことが重要です。
1.毎日の清掃
インプラントも天然歯も、プラーク管理が基本です。
2.定期的な歯科メインテナンス
自分では気づきにくい炎症や補綴物の変化を確認します。
3.噛み合わせ
補綴治療後も咬合状態は変化することがあります。
4.ブラキシズム
睡眠中・日中の両方を考えます。
5.補綴物の状態
小さなチッピング、摩耗、スクリュー緩みなどを早期に確認します。
6.咬合スプリント
必要な患者さんでは、装置の摩耗・適合・咬合状態も定期的に確認します。
インプラントが少し動く場合は様子を見ていい?
インプラントやインプラント上の被せ物に、
「動く感じがする」
「カタカタする」
「噛むと違和感がある」
という場合には、放置しないほうがよいでしょう。
スクリューの緩みなど比較的対応しやすい問題の場合もありますが、原因を確認する必要があります。
自分で締めたり、強く噛んで確認したりせず、歯科医院で診てもらうことをおすすめします。
セラミックが欠けた場合も、そのまま使っていい?
小さな欠けであっても、一度確認したほうがよいでしょう。
欠けた場所や大きさによって、
- 研磨
- 修理
- 再製作
- 経過観察
など対応が異なります。
また、
なぜ欠けたのか
を考えることも重要です。
PreBeau Oral Careが補綴治療後の「力」を重視する理由
セラミックもインプラントも、
治療そのものがゴールではありません。
大切なのは、
できるだけ長く、健康な状態で使うこと。
そのためには、
炎症を防ぐ。
清潔に保つ。
そして、
壊す力についても考える。
PreBeau Oral Careでは、
- 歯ぎしり
- 食いしばり
- 天然歯の摩耗
- セラミック
- インプラント
- 噛み合わせ
- 顎関節
- 咀嚼筋
などを必要に応じて確認します。
そのうえで、
マウスピースが必要なのか。
大人のプレオルソが適しているのか。
日中の食いしばりへの行動アプローチが重要なのか。
経過観察でよいのか。
を考えます。
「とりあえず全員にマウスピース」ではありません。
まとめ|インプラントやセラミックを守るには「細菌」と「力」の両方を管理する
インプラントやセラミックを長く使うためには、
歯磨き・クリーニングなどの細菌管理
だけではなく、
歯ぎしり・食いしばりなどの力の管理
についても考える必要があります。
近年のsystematic reviewやmeta-analysisでは、ブラキシズム患者ではインプラント支持補綴物の機械的合併症やインプラント失敗リスクが高いことが報告されています。
ただし、
歯ぎしりがある=インプラントが失敗する
わけではありません。
また、
マウスピースを入れれば絶対に守れる
ということでもありません。
大切なのは、
- ブラキシズムの有無
- 歯の状態
- 補綴物
- インプラント
- 咬合
- 顎関節
- 過去の破損歴
を確認し、その人に合ったリスク管理を行うことです。
特に、
「セラミックが何度も欠ける」
「インプラントのスクリューが繰り返し緩む」
「歯がどんどんすり減っている」
「家族から強い歯ぎしりを指摘されている」
場合には、
壊れた部分だけを治すのではなく、噛む力も一度評価することをおすすめします。
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プレオルソ ユーティリティ|歯科用咬合スプリント
医療機器製造販売認証番号:225ADBZX00053000.
執筆・監修:歯科医師 毛利 国安
PreBeau Oral Care