朝起きると顎が痛い・疲れているのはなぜ?歯ぎしり・食いしばりとの関係
Last Updated on 1 week ago by prebeau
「朝起きると顎が疲れている」
「寝起きに頬やこめかみがだるい」
「朝だけ口が開けにくい」
「寝ている間に食いしばっているのでは?」
このような症状があると、
「夜中に歯ぎしりをしているからでは?」
と考える方は多いと思います。
実際、睡眠時の歯ぎしり・食いしばり(睡眠時ブラキシズム)が、顎の筋肉や歯にかかる負担と関係しているケースはあります。
しかし、
朝の顎の痛み・疲れ=必ず歯ぎしり
ではありません。
顎の痛みには、
- 咀嚼筋の疲労や痛み
- 顎関節症(TMD)
- 睡眠時ブラキシズム
- 日中の食いしばり
- 顎関節そのものの問題
- 歯の痛み
- その他の口腔・全身的な原因
など、複数の可能性があります。
大切なのは、
「マウスピースを入れればいい」と最初から決めるのではなく、どこが痛いのか、いつ痛いのか、何が起きているのかを確認することです。
この記事では、朝起きたときの顎の痛みや疲れについて、歯ぎしり・食いしばりとの関係、顎関節症との違い、受診の目安、マウスピースや大人のプレオルソの役割まで歯科医師が解説します。
朝起きると顎が痛いのはなぜ?
顎を動かしているのは、顎関節だけではありません。
食べる。
話す。
飲み込む。
歯を噛み合わせる。
こうした動作では、顎関節とともに咀嚼筋が働いています。
代表的なのが、
- 咬筋
- 側頭筋
- 内側翼突筋
- 外側翼突筋
などです。
睡眠中や日中にこれらの筋肉が長時間活動していると、朝起きたときに、
「顎が重い」
「頬が疲れている」
「こめかみが張っている」
と感じることがあります。
ただし、顎の痛みは筋肉だけでなく、顎関節そのものから生じている場合もあります。
「顎が痛い」と「顎が疲れる」は少し違う
患者さんが「顎が痛い」と表現していても、実際の症状はさまざまです。
例えば、
頬がだるい・張っている
咬筋など、咀嚼筋の疲労や痛みが関係している可能性があります。
こめかみが重い
側頭筋などの筋活動が関係する場合があります。
耳の前あたりが痛い
顎関節周囲の症状である可能性があります。
口を開けると痛い
筋肉または顎関節の問題などを考えます。
朝だけ口を開けにくい
睡眠中の筋活動、顎関節、その他の要因を含めて評価します。
このように、痛む場所と動作によって考えるべきものが異なります。
顎関節症(TMD)とは?
「顎が痛い=顎関節症」と思われることがありますが、顎関節症は一つの病気の名前ではありません。
英語では、
Temporomandibular Disorders(TMDs)
と呼ばれます。
顎関節だけではなく、
- 顎関節
- 咀嚼筋
- 周囲組織
- TMDに関連する頭痛
などを含む複数の状態の総称です。
代表的な症状には、
- 顎関節や咀嚼筋の痛み
- 顎のこわばり
- 口が開きにくい
- 顎がロックする
- 口を開けると痛い
- 痛みを伴う関節音
などがあります。
顎が「カクカク」鳴るだけなら治療が必要?
必ずしも必要ではありません。
顎関節から、
「カクッ」
「パキッ」
と音がする人は珍しくありません。
痛みや開口障害を伴わない関節音だけであれば、必ずしも治療対象ではありません。
一方、
- 音とともに痛む
- 急に口が開かなくなった
- 顎がロックする
- 開口量が減ってきた
場合には、診査したほうがよいでしょう。
朝の顎の疲れと睡眠時ブラキシズムの関係
睡眠中の歯ぎしり・食いしばりは、
睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism)
と呼ばれます。
睡眠時ブラキシズムでは、睡眠中に咀嚼筋がリズミカルまたは非リズミカルに活動します。
そのため、一部の人では、
- 起床時の顎の疲労
- 咀嚼筋の張り
- 顎周囲の違和感
- 歯の違和感
などと関連する可能性があります。
ただし、
朝、顎が疲れる=睡眠時ブラキシズム
と診断できるわけではありません。
歯ぎしりの音がしなくても食いしばっている?
その可能性はあります。
「歯ぎしり」というと、
ギリギリ、ギシギシ
という音を想像するかもしれません。
しかし、睡眠時ブラキシズムには、音の大きなグラインディングだけでなく、強く噛みしめるような咀嚼筋活動も含まれます。
そのため、
「家族から歯ぎしりを指摘されたことがない」
というだけでは、睡眠中の筋活動を完全には否定できません。
歯ぎしりをしていると顎関節症になる?
ここは慎重に考える必要があります。
2023年のsystematic review・meta-analysisでは、ブラキシズムとTMDとの間に統計学的な関連が報告されています。
睡眠時ブラキシズムだけでなく、覚醒時ブラキシズムでも関連が認められました。
しかし、
関連があることと、歯ぎしりがTMDの唯一の原因であることは別です。
TMDは多因子的です。
心理社会的因子。
痛みに対する感受性。
筋活動。
生活習慣。
外傷。
その他の要因。
などが複雑に関係する可能性があります。
したがって、
「歯ぎしり→顎関節症」
という一本の因果関係だけで説明しないことが重要です。
日中の食いしばりも関係する?
あります。
朝の顎の症状を相談されると、睡眠中ばかりに注目しがちです。
しかし、
- パソコン作業
- スマートフォン
- 運転
- 集中作業
- 緊張しているとき
に無意識に歯を接触させたり、顎を緊張させたりする覚醒時ブラキシズムがある人もいます。
その場合、
「夜中だけ」
ではなく、一日を通して咀嚼筋に負担がかかっている可能性があります。
夕方になるほど顎が疲れる方では、特に日中の行動も確認する価値があります。
朝だけ痛い場合は夜の食いしばり?
起床直後に最も症状が強く、その後徐々に軽くなる場合、
睡眠中の筋活動との関連を考えるきっかけにはなります。
しかし、それだけで診断はできません。
例えば、
- 睡眠姿勢
- 顎関節の状態
- 筋痛
- 歯の炎症
- その他の口腔顔面痛
などでも朝に症状を感じる可能性があります。
診断では「時間帯」も重要な情報ですが、時間帯だけで原因を決めません。
朝、こめかみが痛いのも歯ぎしり?
側頭筋は、歯を噛むときに働く主要な筋肉の一つです。
そのためブラキシズムや食いしばりがある人で、
「朝起きるとこめかみが張っている」
ということがあります。
一方で、頭痛には、
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
- TMDに関連する頭痛
- その他の疾患
などさまざまな種類があります。
そのため、
「朝の頭痛=歯ぎしり」
と決めつけることも適切ではありません。
頭痛が強い、頻度が増えている、神経症状を伴うなどの場合には、医科での評価が必要になることがあります。
歯が痛いような感じがすることもある?
強い咬合力がかかったあとに、
「朝、歯が浮いた感じがする」
「噛むと違和感がある」
と訴える方もいます。
ただし、歯の痛みには、
- むし歯
- 歯髄炎
- 歯根破折
- 歯周病
- 根尖性歯周炎
- 修復物の問題
などもあります。
歯ぎしりだと思い込んで、歯の病気を見逃さないことが重要です。
歯がすり減っていれば歯ぎしりが原因?
これも一律には言えません。
歯の摩耗は、ブラキシズムによって生じることがあります。
一方、
- 酸蝕
- 胃酸逆流
- 食生活
- 機械的摩耗
- 過去のブラキシズム
なども歯のすり減りに関係します。
さらに、現在見えている摩耗は、何年も前から蓄積した痕跡かもしれません。
そのため、現在の歯の摩耗だけから、
「今、毎晩強く歯ぎしりしている」
とは判断できません。
朝の顎の痛みはどう診断する?
まず大切なのは問診です。
例えば、
- いつから痛いか
- 朝だけか、一日中か
- どの場所が痛いか
- 口を開けると痛いか
- 食事で痛いか
- 家族から歯ぎしりを指摘されているか
- 日中に食いしばっていないか
- 顎がロックしたことがあるか
- 頭痛があるか
などを確認します。
そのうえで、
- 顎関節
- 咀嚼筋
- 開口量
- 開口経路
- 関節音
- 歯
- 歯周組織
- 歯の摩耗
- 修復物
- 噛み合わせ
などを診査します。
必要な場合には画像検査などを検討します。
睡眠時ブラキシズムは口の中だけで診断できる?
完全にはできません。
ブラキシズムの評価には、
- 本人・家族からの情報
- 臨床所見
- 筋電図(EMG)
- 睡眠ポリグラフ検査を含む機器評価
などがあります。
2024年のsystematic review・meta-analysisでも、睡眠時ブラキシズムの客観的評価として携帯型EMGとPSGとの診断精度が検討されています。
つまり、
歯がすり減っているから睡眠時ブラキシズム確定
というものではありません。
顎が痛い場合、自分でできることは?
軽い顎の痛みや疲れでは、まず顎への負担を減らすことを考えます。
例えば、
硬いものを無理に噛まない
症状が強い時期に、硬いものを繰り返し噛むことを避けます。
ガムを長時間噛まない
咀嚼筋を休ませます。
日中の食いしばりに気づく
「今、上下の歯が接触していないか」
を確認します。
顎を大きく開けすぎない
あくびなどで痛みが出る場合は、無理な開口を避けます。
温める・冷やす
症状によって医療者から指示されることがあります。
TMDの初期治療では、できるだけ保存的・可逆的な対応から始めることが基本になります。
噛み合わせを削れば顎の痛みは治る?
安易にはおすすめできません。
「噛み合わせが悪いから顎関節症になった」
という説明を聞いたことがあるかもしれません。
しかし現在、TMDを単純に「悪い噛み合わせ」が原因で起こる疾患と考えることは支持されていません。
特に、
顎の痛みを治すためだけに健康な天然歯を削る
ような不可逆的治療には慎重であるべきです。
一度削ったエナメル質は元に戻りません。
ナイトガード・咬合スプリントは有効?
顎関節症やブラキシズムの管理で、咬合スプリントが使用されることがあります。
ただし、
「顎が痛ければ全員マウスピース」
ではありません。
2024年のCochrane Reviewでは、TMDに対する咬合介入について、多くのRCTが存在するものの、全体としてエビデンスの確実性は非常に低く、明確な結論を出すには不十分とされています。
一方、2024〜2026年の複数のsystematic review・meta-analysisでは、一部のTMD患者で咬合スプリントによる疼痛改善などが示唆されています。
つまり、
適切な症例では選択肢になり得るが、万能ではない
という位置づけが妥当です。
マウスピースを入れれば顎関節症が治る?
「治る」と一括りにするのは適切ではありません。
TMDにはさまざまなタイプがあります。
筋肉が中心の問題なのか。
関節が中心なのか。
両方なのか。
慢性疼痛の要素が強いのか。
によって治療方針は変わります。
装置を使用する場合にも、
なぜこの患者さんに装置を使用するのか
を明確にする必要があります。
大人のプレオルソは朝の顎の疲れに使える?
PreBeau Oral Careで扱う**大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)**は、歯科用咬合スプリントです。
メーカーでは、
- 歯ぎしり・食いしばりによる補綴物の保護
- インプラントへの過度な負担への対応
- 顎関節への負担軽減
- 矯正後の歯列安定
などへの活用が示されています。
したがって、
歯ぎしり・食いしばりなどによる力の管理を検討する患者さんでは、選択肢の一つになることがあります。
ただし、
「朝、顎が痛いからプレオルソ」
と診断なしに決めるわけではありません。
まず痛みの原因を評価することが先です。
プレオルソを入れれば食いしばりそのものが止まる?
そのようには考えません。
大人のプレオルソを含む咬合スプリントを使用する場合、
ブラキシズムそのものを完全に消失させる
というより、
- 歯を守る
- 補綴物を守る
- インプラントへの過剰な力を管理する
- 顎への負担を考える
といった目的を明確にします。
睡眠時ブラキシズム自体を確実に止める万能な装置ではありません。
日中の食いしばりが強い場合は別のアプローチも必要
もし主な問題が覚醒時ブラキシズムであれば、マウスピースだけではなく、
自分が噛みしめていることに気づく
ことも非常に重要です。
例えばスマートフォンに、
「歯、離れてる?」
と一日に何度か通知を出してみる。
パソコンに小さな目印をつける。
仕事中に顎の力を確認する。
こうした方法で、無意識の行動を認識できる場合があります。
睡眠時と覚醒時では、ブラキシズムへのアプローチも同じではありません。
朝、顎が痛いときに早めに受診したほうがよいケース
次のような場合には、一度歯科・口腔外科などで診査を受けることをおすすめします。
- 痛みが数日以上続く
- 徐々に悪化している
- 口が開きにくい
- 顎がロックする
- 食事がしにくい
- 顎関節が腫れている
- 歯が痛む
- 歯が欠けた
- 顎をぶつけたあとから痛い
- マウスピースを使っても症状が悪化する
特に外傷後、強い腫れ、発熱などを伴う場合には、通常のブラキシズムとは別の問題も考える必要があります。
胸の痛みなどと一緒に顎が痛む場合は?
顎の痛みの多くは歯科・筋骨格系の問題ですが、すべての顎痛が歯や顎関節から生じるわけではありません。
突然の顎の痛みに、
- 胸の痛み・圧迫感
- 息苦しさ
- 冷汗
- 吐き気
- 腕や肩などへの痛み
などを伴う場合には、歯ぎしりや顎関節症だと自己判断せず、緊急性のある疾患も考えて速やかな医療評価が必要です。
PreBeau Oral Careでは「痛いからマウスピース」だけでは考えません
朝、顎が痛い。
歯ぎしりをしている。
だからマウスピース。
一見シンプルですが、実際にはそれだけでは不十分です。
まず、
どこが痛いのか。
筋肉なのか。
顎関節なのか。
歯なのか。
そして、
睡眠中なのか。
日中なのか。
歯やセラミックへのダメージはあるのか。
インプラントが入っているのか。
などを確認します。
そのうえで、
経過観察。
セルフケア。
行動へのアプローチ。
咬合スプリント。
必要に応じた他科への紹介。
などを選択します。
PreBeau Oral Careが大切にしているのは、
「痛いところを削る」のではなく、できるだけ原因を整理して、今ある歯を守ること。
これは予防歯科の考え方にもつながります。
まとめ|朝の顎の痛みは「歯ぎしり」と決めつけず、筋肉・顎関節・歯を確認する
朝起きると、
「顎が痛い」
「顎が疲れている」
「頬がだるい」
「こめかみが張っている」
という症状がある場合、睡眠時の歯ぎしり・食いしばりが関係している可能性があります。
しかし、
朝の顎の痛み=睡眠時ブラキシズム
ではありません。
顎関節症。
筋肉の問題。
歯の問題。
覚醒時ブラキシズム。
その他の口腔顔面痛。
など、さまざまな原因を考える必要があります。
また、ブラキシズムとTMDには関連が報告されていますが、
「歯ぎしりが顎関節症の唯一の原因」
と考えるのも適切ではありません。
そして治療についても、
「顎が痛いから、とりあえず噛み合わせを削る」
という不可逆的な方法より、まず診査を行い、必要に応じて保存的・可逆的な方法から検討することが基本です。
咬合スプリントや大人のプレオルソを使用する場合にも、
何を改善・保護する目的で使用するのか
を明確にすることが重要です。
朝の顎の疲れが繰り返す。
口が開きにくい。
歯やセラミックが欠ける。
家族から歯ぎしりを指摘されている。
このような場合には、一度歯科で現在の顎・筋肉・歯の状態を確認してみるとよいでしょう。
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執筆・監修:歯科医師 毛利 国安
PreBeau Oral Care