歯ぎしり・食いしばり用マウスピースとは?ナイトガードとの違いを解説
Last Updated on 1 week ago by prebeau
「歯ぎしりがあるのでマウスピースを作ったほうがいいと言われた」
「ナイトガードとマウスピースは何が違うの?」
「市販のマウスピースでも歯を守れる?」
「大人のプレオルソは普通のナイトガードと何が違う?」
歯ぎしりや食いしばりの相談をすると、よく出てくるのが
マウスピース
ナイトガード
咬合スプリント
という言葉です。
これらは日常会話では同じような意味で使われることがありますが、厳密には「何のために作る装置なのか」「どのような設計なのか」によって役割が異なります。
また、
マウスピースを入れれば歯ぎしりそのものが治る
という理解も正確ではありません。
歯ぎしり・食いしばり用の装置では、
- 天然歯を守る
- セラミックや被せ物を守る
- インプラントへの過度な負担を管理する
- 顎関節や筋肉への負担を考える
といった目的で使用することがあります。
この記事では、ナイトガード・咬合スプリント・市販マウスピース・大人のプレオルソの違いを、歯科医師が整理して解説します。
まず結論|「ナイトガード」と「マウスピース」は完全に別物ではありません
「ナイトガード」と「マウスピース」は、必ずしも医学的に明確に二分される名称ではありません。
一般的には、
マウスピース
という言葉が口の中に装着する装置全般を広く指し、
ナイトガード
は主に睡眠中の歯ぎしり・食いしばりから歯や修復物を守るために使用する装置を指して使われています。
歯科では、
咬合スプリント(Occlusal Splint)
という言葉もよく使います。
したがって、
「マウスピースかナイトガードか」
という名前だけで比べるより、
何を目的として、どのような設計で作られた装置なのか
を見ることが重要です。
ナイトガードとは?
ナイトガードは、主に就寝時に装着する歯科用の口腔内装置です。
歯ぎしりや食いしばりによって上下の歯が直接強く接触することを避け、
- 天然歯
- 詰め物
- 被せ物
- セラミック
- インプラント上部構造
などに加わる力を管理する目的で使用されます。
ただし、
ナイトガードを装着すれば睡眠時ブラキシズムそのものが必ず止まるわけではありません。
これは非常に大切なポイントです。
咬合スプリントとは?
「咬合スプリント」は、歯科で使用される口腔内装置の総称の一つです。
設計によって、
- 歯を保護する
- 咬合接触をコントロールする
- 顎関節や咀嚼筋への負担を管理する
- 補綴物を保護する
など、目的が変わります。
つまり、
咬合スプリント=歯ぎしりを止める装置
ではありません。
同じ「スプリント」でも、患者さんの状態や治療目的によって設計が異なります。
歯ぎしり用マウスピースを使う一番の目的は?
多くの場合、一番わかりやすい目的は、
歯や修復物を機械的な負担から守ること
です。
例えば、睡眠中に強い歯ぎしりをしている方では、上下の歯が繰り返し接触します。
その結果、
- 歯がすり減る
- 歯が欠ける
- 詰め物が壊れる
- セラミックが欠ける
- 被せ物に負担がかかる
といった問題が起こる場合があります。
そこで上下の歯の間に装置を介在させることで、直接的な歯同士の接触を避けます。
マウスピースを入れると歯ぎしりは治る?
ここは誤解されやすいところです。
現在の研究では、
咬合スプリントを装着することで睡眠時ブラキシズムそのものを確実に消失させる
という強いエビデンスはありません。
2021年のsystematic reviewでも、咬合スプリントが無治療や他の治療よりブラキシズムそのものに対して優れていると結論づけるには、エビデンスが不十分とされています。
そのため、
「歯ぎしりを止めるマウスピース」
というより、
歯ぎしりによって生じるダメージを管理するための装置
と考えたほうが実際の臨床に近いでしょう。
では、マウスピースを入れる意味はない?
いいえ。
ブラキシズム自体を完全に止めなくても、
歯同士の直接接触を避ける
という意味があります。
例えば装置の表面に摩耗がみられる場合、
本来その摩耗が天然歯やセラミックに生じていた可能性を考えることができます。
特に、
- 歯がかなり摩耗している
- セラミック治療を受けている
- インプラントが入っている
- 修復物が繰り返し壊れる
といった方では、力の管理を考える意味があります。
市販の歯ぎしり用マウスピースとの違いは?
インターネットやドラッグストアでは、歯ぎしり対策用のマウスピースも販売されています。
例えば、
- 既製品
- お湯で柔らかくして自分で成形するタイプ
- 柔らかい樹脂製
などがあります。
価格が安く、すぐ入手できることはメリットです。
一方で、歯科医院で作る装置では、
- 歯並び
- 噛み合わせ
- 歯周病
- 歯の動揺
- セラミック
- インプラント
- 顎関節
- 咀嚼筋
- どの歯にどのように力がかかっているか
などを確認したうえで設計を考えます。
単に「歯型に合っているか」だけではありません。
市販品は危険なの?
すべての市販品が危険という意味ではありません。
ただし、
長期間使用する装置を自己判断だけで使い続けることには注意が必要です。
装置の設計や装着状態によっては、
- 噛み合わせ
- 顎関節
- 歯
- 歯周組織
への影響を考える必要があります。
特に、
- 歯周病がある
- 歯が動いている
- 顎が痛い
- 多数のセラミックが入っている
- インプラントがある
という場合には、一度歯科で確認するほうが安心です。
柔らかいマウスピースと硬いマウスピースはどちらがいい?
「柔らかいほうが歯に優しい」
「硬いほうが歯ぎしりにはいい」
という説明を見かけることがあります。
しかし、単純に素材だけで優劣を決めることはできません。
重要なのは、
- 使用目的
- 咬合接触
- 厚み
- 装置形態
- 保持力
- 患者さんの歯や顎の状態
です。
ブラキシズムに対する各種咬合装置の比較研究もありますが、装置によって筋活動や症状への影響は異なり、現時点で「この素材・この形なら全員に最適」と言えるものではありません。
上の歯につける?下の歯につける?
これも患者さんによって異なります。
上顎に装着するタイプもあれば、下顎に装着するタイプもあります。
選択には、
- 歯列
- 噛み合わせ
- 補綴物
- インプラント
- 違和感
- 保持
- 治療目的
などが関係します。
「上が正解」「下が正解」というものではありません。
ナイトガードは毎晩つける?
睡眠時の歯ぎしり・食いしばりから歯を守ることを目的としている場合には、就寝時に使用することが一般的です。
ただし、
- 装置の種類
- 症状
- 顎関節の状態
- 歯の状態
- 治療目的
によって装着方法は異なります。
歯科医師から指示された使用方法に従うことが大切です。
日中の食いしばりにもナイトガードをつける?
覚醒時ブラキシズムでは、装置だけではなく、
自分が食いしばっていることに気づく
という行動面へのアプローチも重要になります。
日中ずっとマウスピースを装着すればよいとは限りません。
むしろ、
「パソコン中に噛みしめている」
「運転中に顎に力が入っている」
と気づくことで、行動を変えられる場合があります。
睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムでは、同じ「歯ぎしり・食いしばり」でも管理方法が異なることがあります。
ナイトガードで顎関節症も治る?
咬合スプリントは顎関節症(TMD)の保存的治療の一つとして使用される場合があります。
ただし、
顎関節症なら全員ナイトガードを入れればよい
わけではありません。
TMDには、
- 筋肉の痛み
- 関節痛
- 関節円板の問題
- 開口障害
- 関節雑音
などさまざまな状態があります。
2024年のRCTメタ解析や2026年のsystematic reviewの総括でも、咬合スプリントには小さな有益効果または他の保存的治療と同程度の効果が示される一方、すべてのTMDに対する決定的な治療とまでは言えません。
顎が痛い場合には、まず何が痛みの原因なのかを評価することが必要です。
セラミックがある人はナイトガードをしたほうがいい?
必ず全員に必要というわけではありません。
ただし、
- 強いブラキシズムが疑われる
- 歯の摩耗が著しい
- セラミックの破損歴がある
- 多数歯に補綴治療を行っている
場合には、治療後の力の管理を考える意味があります。
高価なセラミック治療をしたあとに、
どう守るか
まで考えることが重要です。
インプラントがある場合は?
インプラントがある患者さんでも、ブラキシズムや強い咬合力への配慮が必要になる場合があります。
特に、
- 複数のインプラント
- 大きな補綴物
- 歯ぎしりが強い
- 過去に補綴物の破損がある
といった場合には、咬合力を含めた定期的な管理が重要です。
咬合スプリントを使用する場合には、
インプラントそのものだけでなく、上部構造や残っている天然歯を含めて設計を考える
必要があります。
大人のプレオルソと普通のナイトガードは何が違う?
PreBeau Oral Careで扱う**大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)**も、歯科用咬合スプリントです。
メーカーであるフォレスト・ワンでは、
- 矯正治療後の歯列の安定
- 歯ぎしり・食いしばりによる補綴物の保護
- インプラントへの負担への対応
- 顎関節への負担軽減
などへの活用が示されています。
患者さんごとの口腔内データをもとに技工される装置です。
「プレオルソ」という名前でも小児用とは別?
ここも混同されやすいポイントです。
一般に「プレオルソ」というと、小児の機能的マウスピース矯正装置を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、
プレオルソ ユーティリティは成人で使用する歯科用咬合スプリント
です。
小児用プレオルソと、目的を同じに考えるものではありません。
大人のプレオルソなら歯ぎしりが治る?
ここも明確にしておきます。
プレオルソ ユーティリティを装着すれば、ブラキシズムそのものが完全に消失するという意味ではありません。
大切なのは、
- 天然歯を守りたいのか
- セラミックを守りたいのか
- インプラントへの負担を考えたいのか
- 顎関節への負担を管理したいのか
- 矯正後の保定も考えたいのか
という目的です。
その目的に合った装置を選びます。
ナイトガードを作る前に確認したいこと
「歯ぎしりがあるから、とりあえずナイトガード」
ではなく、まず次の点を確認します。
1.本当に歯ぎしり・食いしばりがあるか
家族からの指摘、朝の症状、歯の状態などを確認します。
2.歯がどの程度ダメージを受けているか
摩耗、亀裂、欠けなどを確認します。
3.修復物が壊れていないか
セラミック、詰め物、被せ物などを評価します。
4.インプラントがあるか
補綴設計や力のかかり方を確認します。
5.顎関節や筋肉に症状があるか
痛み、開口障害、朝の疲労などを確認します。
6.睡眠時か日中か
睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムでは管理方法が異なる場合があります。
歯がすり減っていればナイトガードが必要?
これも一律には言えません。
歯の摩耗には、
- ブラキシズム
- 酸蝕
- 胃酸逆流
- 食生活
- 過去の歯ぎしり
など、複数の原因があります。
2024年のレビューでも、
歯の摩耗だけから現在のブラキシズム活動を判断すべきではない
とされています。
つまり、
「歯がすり減っている
→ 歯ぎしりしている
→ ナイトガード」
と機械的に決めるのではなく、原因を確認する必要があります。
穴が開いたら交換したほうがいい?
歯ぎしりの強い方では、装置が摩耗したり、傷がついたり、場合によっては破損したりします。
交換が必要かどうかは、
- 摩耗量
- 破損
- フィット
- 噛み合わせ
- 歯列変化
などを見て判断します。
「穴が開くまで使えばいい」と一律に決めるのではなく、定期的に確認することが大切です。
ナイトガードを使うと噛み合わせが変わる?
適切に作製・管理された装置でも、長期間使用する場合には歯列や咬合状態を定期的に確認することが重要です。
特に、
- 一部の歯だけを覆う装置
- 長時間装着する装置
- 自己判断で使用している装置
では注意が必要なことがあります。
「入ればいい」ではなく、
装着後も経過を見る
ことが大切です。
市販品と歯科医院の装置、どちらを選ぶ?
単純に価格だけで比較するものではありません。
市販品には、
すぐ購入できる
というメリットがあります。
一方、歯科医院では、
その人の歯や補綴物、顎関節、噛み合わせを確認したうえで目的を決めて設計する
ことができます。
特に、
- 歯がかなりすり減っている
- 歯が欠ける
- セラミックが何度も壊れる
- インプラントが入っている
- 顎が痛い
- 歯が動いている
場合には、一度歯科で診査を受けるほうがよいでしょう。
PreBeau Oral Careでは「とりあえずナイトガード」にはしません
歯ぎしりや食いしばりがあるからといって、全員に同じマウスピースが必要とは限りません。
まず、
何を守りたいのか
を考えます。
天然歯なのか。
セラミックなのか。
インプラントなのか。
顎関節なのか。
矯正後の歯並びなのか。
そして、
睡眠中のブラキシズムなのか、日中の食いしばりなのか
も確認します。
日中の食いしばりであれば、装置だけではなく行動への気づきが重要になることもあります。
PreBeau Oral Careでは、
壊れたものを治す前に、なぜ壊れるのかを考える
ことも予防歯科の一つだと考えています。
まとめ|マウスピースは「歯ぎしりを止める装置」ではなく「何を守るか」で選ぶ
歯ぎしり・食いしばり用のマウスピースには、
- ナイトガード
- 咬合スプリント
- 市販のマウスピース
- 大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)
などがあります。
名称だけで比較すると分かりにくくなります。
大切なのは、
何を目的として使用するのか
です。
睡眠時ブラキシズムそのものを完全に止めること。
歯を守ること。
セラミックを守ること。
インプラントへの負担を管理すること。
顎関節への負担を考えること。
矯正後の歯列を安定させること。
これらは同じではありません。
だからこそ、
「歯ぎしりがあるからマウスピース」ではなく、「現在何が起きていて、何を守る必要があるのか」を確認すること
が重要です。
関連記事
- 寝ている間の歯ぎしりはなぜ起こる?歯がすり減る・欠ける原因と対策
- 食いしばりがひどいのはなぜ?無意識に歯を噛みしめる原因と歯への影響
- 朝起きると顎が痛い・疲れているのはなぜ?歯ぎしり・食いしばりとの関係
- 歯ぎしり・食いしばりからインプラントやセラミックを守るには?噛む力への対策
- 顎関節症と歯ぎしり・食いしばりの関係は?顎への負担を減らすためにできること
参考文献
- Verhoeff MC, Lobbezoo F, Ahlberg J, et al.
Updating the Bruxism Definitions: Report of an International Consensus Meeting.
Journal of Oral Rehabilitation. 2025;52(9):1335-1342.
PMID: 40312776.
DOI: 10.1111/joor.13985. - Lobbezoo F, Ahlberg J, Raphael KG, et al.
International consensus on the assessment of bruxism: Report of a work in progress.
Journal of Oral Rehabilitation. 2018;45(11):837-844.
PMID: 29926505.
DOI: 10.1111/joor.12663. - Hardy RS, Bonsor SJ.
The efficacy of occlusal splints in the treatment of bruxism: A systematic review.
Journal of Dentistry. 2021;108:103621.
PMID: 33652054.
DOI: 10.1016/j.jdent.2021.103621. - Ferreira GF, Carletti TM, Gama LT, et al.
Influence of occlusal appliances on the masticatory muscle function in individuals with sleep bruxism: A systematic review and meta-analysis.
European Journal of Oral Sciences. 2024.
PMID: 38421263.
DOI: 10.1111/eos.12979. - Ferreira GF, Gama LT, Garcia RCMR.
Effect of occlusal appliances on the sleep of individuals with bruxism: A systematic review and meta-analyses.
Cranio. 2024.
PMID: 39707941.
DOI: 10.1080/08869634.2024.2444712. - Manfredini D, et al.
Tooth wear and bruxism: A scoping review.
Journal of Dentistry. 2024.
PMID: 38574847. - Occlusal splints versus botulinum toxin for the management of clinical sequelae associated with adult sleep bruxism: A systematic review and meta-analysis.
PMID: 42274300.
DOI: 10.1080/08869634.2026.2683509.
- 株式会社フォレスト・ワン.
プレオルソ ユーティリティ|歯科用咬合スプリント
医療機器製造販売認証番号:225ADBZX00053000.
執筆・監修:歯科医師 毛利 国安
PreBeau Oral Care