食いしばりがひどいのはなぜ?無意識に歯を噛みしめる原因と歯への影響
Last Updated on 1 week ago by prebeau
「仕事中、気づくと歯を強く噛みしめている」
「パソコンやスマートフォンを見ていると顎に力が入る」
「集中していると、上下の歯がずっと接触している」
「夕方になると顎やこめかみが疲れる」
このような状態は、**覚醒時ブラキシズム(Awake Bruxism)**と関連している可能性があります。
「ブラキシズム」というと、寝ている間の歯ぎしりを想像する方が多いと思います。
しかし現在では、
睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism)
覚醒時ブラキシズム(Awake Bruxism)
は、分けて考えることが重要とされています。
覚醒時ブラキシズムでは、歯をギリギリ擦るというより、
- 無意識に上下の歯を接触させる
- 強く噛みしめる
- 顎に力を入れる
- 歯を接触させなくても顎を緊張させる
といった状態がみられます。
そして近年の国際コンセンサスでは、ブラキシズムは単純に「病気」として扱うのではなく、状況によって歯・補綴物・顎・筋肉などへのリスクになり得る咀嚼筋活動として捉えられています。
この記事では、
- 食いしばりとは何か
- なぜ無意識に歯を噛みしめるのか
- ストレスとの関係
- パソコン・スマホ・集中時との関係
- 歯やセラミック、インプラントへの影響
- 顎の疲れとの関係
- 自分で気づく方法
- マウスピースは必要なのか
- 大人のプレオルソの役割
について歯科医師が解説します。
睡眠中の歯ぎしりや大人のプレオルソについては、こちらもご覧ください。
食いしばりとは?
一般に「食いしばり」と呼ばれる状態には、上下の歯を強く噛み合わせる**clenching(クレンチング)**などが含まれます。
ただし、現在の覚醒時ブラキシズムの定義は、単純な「歯の食いしばり」だけではありません。
2025年に報告された国際コンセンサス更新でも、覚醒時ブラキシズムは、起きている間の
- 反復的または持続的な歯の接触
- 下顎の緊張・固定
- 下顎を押し出すような活動
などを含む咀嚼筋活動として整理されています。
つまり、
「歯を強く噛んでいるか」だけではなく、「顎周囲の筋肉が不必要に活動し続けていないか」
を見ることが大切です。
普段、上下の歯は接触しているもの?
ここは非常に重要です。
食事をしているときや飲み込むときなどを除けば、リラックス時には上下の歯が常に強く接触している必要はありません。
ところが、
- パソコン作業
- スマートフォン
- 勉強
- 運転
- 家事
- 細かい作業
- ゲーム
- 緊張する場面
などで無意識に上下の歯を接触させている方がいます。
本人にとっては普通になっているため、
「噛みしめていますか?」
と聞いても、
「していません」
と答えることがあります。
しかし実際に確認してみると、
一日の中でかなり頻繁に上下の歯を接触させていた
というケースがあります。
覚醒時ブラキシズムは珍しい?
珍しい行動ではありません。
2025年に発表された大規模systematic review・meta-analysisでは、一般集団における自己申告ベースの覚醒時ブラキシズムは約4人に1人にみられ、臨床的評価ではそれより低い割合でした。
一方で、研究によって評価方法が異なるため、単純な有病率だけで判断することには注意が必要です。
重要なのは、
食いしばりがあること自体より、それによって臨床的な問題が起きているか
です。
食いしばりはなぜ起こる?
「噛み合わせが悪いから食いしばる」
と思われることがあります。
しかし現在の考え方では、覚醒時ブラキシズムを噛み合わせだけで説明することはできません。
複数の要因が関係している可能性があります。
ストレスと食いしばりは関係する?
心理的ストレス、緊張、不安などと覚醒時ブラキシズムとの関連は研究されています。
実際、覚醒時ブラキシズムの頻度と一部の心理的特徴との関連を示す研究があります。
しかし、
「ストレスがあるから必ず食いしばる」
あるいは、
「食いしばりの原因はすべてストレス」
という意味ではありません。
人によって、
- 精神的緊張
- 集中
- 習慣
- 作業環境
- 身体的な緊張
- 痛み
- その他の要因
が複雑に関係する可能性があります。
そのため、「ストレスをなくせば治る」と単純化しないことが大切です。
集中していると食いしばるのはなぜ?
覚醒時ブラキシズムでよくみられるのが、
集中時の無意識の筋活動
です。
例えば、
パソコンで資料を作っている。
細かい作業をしている。
車を運転している。
ゲームをしている。
重要なメールを書いている。
仕事の締め切りに追われている。
こうした場面で、
気づかないうちに顎に力を入れている方がいます。
だからこそ、覚醒時ブラキシズムでは、
「自分がいつ食いしばっているのかに気づく」
こと自体が非常に重要になります。
スマートフォンと食いしばりは関係する?
スマートフォンそのものが食いしばりを直接引き起こす、と断定することはできません。
ただし、
- 長時間同じ姿勢をとる
- 画面に集中する
- 肩や首に力が入る
- 無意識に顎を緊張させる
といった状況で、覚醒時ブラキシズムが出る人はいます。
「スマホを見ているときに歯が接触していないか」
を一度確認してみるだけでも、自分の癖に気づくきっかけになります。
「歯ぎしり」より「顎に力を入れる」ほうが多い?
これは最近の研究で興味深いポイントです。
覚醒時ブラキシズムというと、
「日中に歯をギリギリ擦る」
イメージを持つかもしれません。
しかし、スマートフォンを使ったEcological Momentary Assessment(EMA:日常生活中にその瞬間の状態を繰り返し確認する方法)による研究では、
- 歯の接触
- 顎に力を入れる行動
などが比較的多く報告される一方、起きている間の歯ぎしりそのものは非常に少ないことが示されています。
つまり、覚醒時ブラキシズムでは、
「ギリギリしているか」
よりも、
「無意識に歯を触れ合わせたり、顎を緊張させ続けていないか」
を見ることが重要です。
食いしばりで歯はすり減る?
強い歯の接触が繰り返されれば、歯や修復物に機械的な負担が加わる可能性があります。
例えば、
- 歯の摩耗
- 小さな欠け
- 歯の亀裂
- 詰め物の破損
- セラミックのチッピング
などがみられる場合があります。
ただし、
歯がすり減っている=食いしばりが原因
と決めつけることはできません。
歯の摩耗には、
- 酸性飲料
- 胃酸
- 食生活
- 歯ブラシなどによる機械的摩耗
- 過去のブラキシズム
- 加齢
なども関係します。
歯の状態だけではなく、現在の行動と合わせて評価することが大切です。
食いしばりで歯が割れることはある?
歯に強い力が繰り返しかかることは、歯や修復物にとってリスク要因になり得ます。
ただし、
「食いしばりをしているから必ず歯が割れる」
という意味ではありません。
歯の破折には、
- 大きな詰め物・被せ物
- 残っている歯質の量
- 根管治療の既往
- むし歯
- 外傷
- 噛み合わせ
- 修復材料
など多くの因子が関係します。
歯が繰り返し欠ける場合には、単に食いしばりだけを原因と考えず、歯そのものを評価します。
セラミックへの影響は?
セラミックやその他の補綴物にも、強い咬合力が長時間・反復して加わることがあります。
特に、
「セラミックが何度も欠ける」
「同じ場所の詰め物が壊れる」
という場合には、材料だけではなく力のかかり方についても確認する価値があります。
ただし、修復物の破損原因は、
- 材料
- 厚み
- 接着
- 支台歯
- 設計
- 噛み合わせ
など多因子です。
「食いしばり=セラミックが壊れる」と一律には言えません。
インプラントが入っている場合は?
インプラントが入っている方では、力の管理も重要な要素です。
インプラント治療は、手術して被せ物を入れたら終わりではありません。
長期的には、
- プラークコントロール
- インプラント周囲組織
- 補綴物
- ネジ
- 噛み合わせ
- 咬合力
などを確認していく必要があります。
食いしばりやブラキシズムが疑われる場合には、その方の補綴設計や他のリスクも含めて管理します。
食いしばりで顎が疲れる?
覚醒時ブラキシズムでは、咀嚼筋が長時間活動することで、
- 頬が疲れる
- こめかみが重い
- 顎がだるい
- 顎周囲がこわばる
- 口を開けにくい感じがする
などを訴えることがあります。
覚醒時ブラキシズムと顎関節症(TMD)との関連については研究されています。
2023年のsystematic review・meta-analysisではブラキシズムとTMDとの関連が報告され、覚醒時ブラキシズムでも関連がみられました。
ただし、これは
「食いしばりがあれば必ず顎関節症になる」
という意味ではありません。
TMD自体も複数の要因が関係する疾患群です。
頭痛や肩こりも食いしばりのせい?
顎やこめかみ周囲の筋肉が過剰に緊張している場合、頭頸部の不快感と同時にみられることがあります。
しかし、
頭痛。
首の痛み。
肩こり。
には非常に多くの原因があります。
したがって、
「肩こりがある=食いしばり」
「頭痛=歯の噛み合わせ」
と決めつけることは適切ではありません。
持続する頭痛や神経症状などがある場合には、歯科だけでなく適切な医科受診も必要です。
自分が食いしばっているか確認する方法
覚醒時ブラキシズムの特徴は、
起きているので、自分で気づける可能性がある
ことです。
例えば今日一日、
- パソコン中
- スマートフォン中
- 仕事中
- 運転中
- 料理中
- 緊張した場面
で、
「今、上下の歯は接触している?」
と確認してみてください。
歯が接触している。
顎に力が入っている。
舌や顎を固定している。
ということに気づくかもしれません。
スマホを使って食いしばりに気づく方法もある
覚醒時ブラキシズム研究では、**Ecological Momentary Assessment(EMA)**という方法がよく使われるようになっています。
スマートフォンなどから一日に複数回通知を出し、
その瞬間に、
- 歯が離れている
- 軽く接触している
- 食いしばっている
- 顎に力が入っている
などを記録します。
日常生活の中でその瞬間の状態を確認するため、
「あとから思い出してください」
という質問より、自分の行動に気づきやすいという利点があります。
必ず専用アプリが必要というわけではありません。
例えばスマートフォンのリマインダーを利用して、
「歯、離れてる?」
と一日に数回表示するだけでも、自分の習慣を認識するきっかけになります。
食いしばり対策で最初にできること
覚醒時ブラキシズムでは、まず気づくことが重要です。
「食いしばらないように頑張る」
だけでは、無意識の行動なので難しい場合があります。
そこで、
歯の接触に気づく
定期的に、
「今、歯は離れているか」
を確認します。
顎の力を抜く
歯だけでなく、
「顎を固定していないか」
にも注意します。
作業環境を見直す
長時間のデスクワークでは、適度に休憩を入れます。
ストレスや緊張状態を把握する
自分がどのような状況で食いしばりやすいかを認識します。
2026年に発表された覚醒時ブラキシズム管理のsystematic reviewでも、現在のところ万能な単一治療はなく、行動的介入などを含めた管理方法が検討されています。
「歯を離してください」と言われても続かない場合は?
これは珍しくありません。
覚醒時ブラキシズムは無意識の行動だからです。
朝に、
「今日は食いしばらないようにしよう」
と思っていても、仕事が始まれば忘れてしまいます。
だからこそ、
- スマホの通知
- パソコンの付箋
- デスクの小さなマーク
- 定期的なセルフチェック
など、「気づくきっかけ」を日常生活に入れる方法があります。
食いしばりにはマウスピースが必要?
症例によります。
歯や補綴物への負担を管理する目的で咬合スプリントを使用することがあります。
ただし、
マウスピースを装着すれば、日中の食いしばり習慣そのものが治る
とは限りません。
特に覚醒時ブラキシズムでは、
「自分がいつ顎に力を入れているのか」
に気づき、行動を調整していくことが重要になる場合があります。
日中ずっとマウスピースをつければいい?
自己判断で長時間装着することはおすすめしません。
マウスピースの種類や設計によっては、
- 噛み合わせ
- 顎関節
- 歯
- 筋肉
への影響を考える必要があります。
特に長期間使用する場合には、使用目的と時間を歯科医師と確認することが大切です。
大人のプレオルソは食いしばりに使える?
PreBeau Oral Careで扱う**大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)**は、歯科用咬合スプリントです。
歯ぎしり・食いしばりによって、
- 天然歯
- セラミック
- 補綴物
- インプラント
などに大きな負担がかかることが心配される場合、歯を守る目的で検討することがあります。
また、顎関節への負担や矯正後の保定など、患者さんごとの目的も考慮します。
ただし、
プレオルソを使用すれば覚醒時ブラキシズムという行動そのものが治る
という意味ではありません。
装置による保護と、日中の行動へのアプローチは分けて考えることが重要です。
「噛み合わせを削れば食いしばりが治る」?
食いしばりを治すことだけを目的に、健康な天然歯を不可逆的に削ることには慎重であるべきです。
現在のブラキシズム研究では、その原因を単純な咬合異常だけで説明することはできません。
一度削ったエナメル質は元には戻りません。
PreBeau Oral Careでは、
できるだけ削らず、今ある歯を守ること
を基本にしています。
まず、
- 本当に現在食いしばりがあるのか
- いつ起きているのか
- 何か症状を起こしているのか
- 歯や補綴物にダメージがあるのか
を確認することが先です。
睡眠中の歯ぎしりと日中の食いしばりは治療も同じ?
必ずしも同じではありません。
睡眠時ブラキシズムは、本人が眠っている間に起こります。
一方、覚醒時ブラキシズムは起きている間に起こるため、本人がその瞬間の行動に気づくことができるという大きな違いがあります。
そのため、
睡眠時ブラキシズムでは歯・修復物の保護など。
覚醒時ブラキシズムでは行動への気づきや管理。
といったように、アプローチが異なる場合があります。
両方が存在している方もいます。
PreBeau Oral Careが食いしばりを「予防」と考える理由
食いしばりは、すぐに強い痛みを起こすとは限りません。
しかし、長期的に強い力が加わっている場合、
歯。
修復物。
セラミック。
インプラント。
顎周囲の筋肉。
などへの負担を考える必要があります。
壊れてから修復するだけでなく、
「壊れる前に力の問題に気づく」
ことも予防です。
PreBeau Oral Careでは、歯だけを見るのではなく、
- 歯の摩耗
- 修復物
- セラミック
- インプラント
- 噛み合わせ
- 顎関節
- 咀嚼筋
- 日中の行動
- 睡眠中のブラキシズム
などを必要に応じて確認します。
そして、
「マウスピースを作るべきなのか」
「まず日中の行動に気づくことが重要なのか」
「経過観察でよいのか」
を考えます。
まとめ|食いしばり対策は「まず気づく」ことから
日中の無意識の食いしばりは、覚醒時ブラキシズムとして評価されます。
現在の考え方では、
「噛み合わせが悪いから」
「ストレスだから」
という一つの原因だけで説明するものではありません。
特に、
- パソコン作業
- スマートフォン
- 運転
- 集中作業
- 緊張している場面
などで、無意識に歯を接触させたり、顎に力を入れたりしていることがあります。
覚醒時ブラキシズムの特徴は、
起きているため、自分でその行動に気づける可能性があること。
まず一日に何度か、
「今、上下の歯は接触していないか?」
と確認してみてください。
そして、
- 歯が欠ける
- セラミックが何度も壊れる
- 顎が疲れる
- こめかみが張る
- 歯がすり減ってきた
などの症状がある場合には、歯や顎の状態を一度確認することをおすすめします。
マウスピースや大人のプレオルソを使用する場合にも、
食いしばりそのものを「治す」のか、歯や補綴物を「守る」のか
目的を分けて考えることが大切です。
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執筆・監修:歯科医師 毛利 国安
PreBeau Oral Care