いびき用マウスピースとは?市販品・歯科の口腔内装置・プレオルソの違い
Last Updated on 1 week ago by prebeau
「いびき用マウスピースをネットで見つけたけれど、本当に使って大丈夫?」
「歯医者で作るマウスピースとは何が違う?」
「大人のプレオルソはいびき用マウスピースなの?」
いびき対策として「マウスピース」を検索すると、さまざまな商品や治療法が出てきます。
しかし、見た目が似ていても、
- 市販のいびき対策マウスピース
- 睡眠時無呼吸症に対する歯科の口腔内装置
- 歯ぎしり用ナイトガード
- 大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)
は、目的も設計も同じではありません。
特に重要なのは、毎晩大きないびきをかく方の中に、閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA:Obstructive Sleep Apnea)が隠れている可能性があることです。
そのため、
「いびきを止めたいから、とりあえずマウスピースを買う」
という順番ではなく、まず自分のいびきがどのような状態なのかを考える必要があります。
この記事では、市販品と歯科で作る口腔内装置の違い、OSA用マウスピースの役割、一般的なナイトガード、そして大人のプレオルソとの違いを歯科医師が整理して解説します。
そもそも「いびき用マウスピース」とは?
一般に「いびき用マウスピース」と呼ばれているものには、いくつかの種類があります。
代表的なのが、睡眠中に下顎を通常より前方へ保持するタイプです。
下顎が前方へ移動すると、舌やその周囲の組織も前方へ移動しやすくなり、睡眠中の上気道を確保しやすくなります。
睡眠医学では、このような装置は、
Mandibular Advancement Device(MAD)
Mandibular Advancement Splint(MAS)
などと呼ばれます。
日本語では「下顎前方移動型口腔内装置」などと表現されます。
ただし、市販されている「いびき防止マウスピース」がすべて医学的なOSA用口腔内装置と同じ設計・管理方法というわけではありません。
市販のいびき用マウスピースとは?
インターネットやドラッグストアなどでは、自分で装着するタイプのいびき対策用マウスピースが販売されています。
代表的なのは、
- あらかじめ形が決まっているタイプ
- お湯などで軟化させ、自分の歯に合わせるタイプ
- 下顎を前に出すことを目的としたタイプ
などです。
いわゆるboil-and-bite(ボイル・アンド・バイト)型も、このカテゴリーに含まれます。
価格が比較的安く、すぐ試せることは市販品の特徴です。
一方で、患者さん一人ひとりの、
- 歯並び
- 噛み合わせ
- 顎関節
- 歯周病
- 歯の動揺
- 補綴物
- インプラント
- 下顎の前方移動量
まで詳細に評価して作られているわけではありません。
市販品でいびきが減れば問題ない?
ここは慎重に考える必要があります。
マウスピースを装着して家族から、
「いびきが静かになった」
と言われることはあるかもしれません。
しかし、
いびきの音が減ったことと、睡眠中の無呼吸や低呼吸が十分改善したことは同じではありません。
閉塞性睡眠時無呼吸症では、
- 無呼吸・低呼吸
- 血中酸素飽和度の低下
- 睡眠の分断
などが問題になります。
いびきの音だけでは、これらが正常化したかどうかは判断できません。
特に、
- 寝ている間に呼吸が止まる
- 大きないびきの後に突然静かになる
- 睡眠中にあえぐ
- 日中に強い眠気がある
- 朝起きても疲れている
という場合には、市販のマウスピースだけで自己判断せず、睡眠時無呼吸症について医療機関で相談することが重要です。
歯科で作るOSA用口腔内装置とは?
閉塞性睡眠時無呼吸症に対して歯科が関わる代表的な治療が、**口腔内装置療法(Oral Appliance Therapy)**です。
特に用いられるのが、下顎を前方へ保持するタイプの装置です。
市販品との大きな違いは、
単に歯型に合わせるだけではなく、治療として適切な下顎位を考えながら作製・調整すること
にあります。
AASM(American Academy of Sleep Medicine)とAADSM(American Academy of Dental Sleep Medicine)の診療ガイドラインでは、OSAに口腔内装置療法を行う場合、非カスタム装置よりも、
歯科医師が管理するカスタムメイドかつ調整可能な口腔内装置
が推奨されています。
「調整可能」であることがなぜ重要?
下顎を前方へ動かす量は、
「多ければ多いほど良い」
わけではありません。
下顎を前へ出すことで上気道を確保しやすくなる一方、前方移動量が大きくなると、
- 顎関節
- 咀嚼筋
- 歯
- 歯周組織
- 噛み合わせ
への影響も考える必要があります。
そのためOSA用口腔内装置では、患者さんの症状や口腔内の状態を確認しながら、段階的に調整することがあります。
日本睡眠歯科学会の診療ガイドラインでも、口腔内装置の下顎移動量について、初期設定後さらに患者ごとの調整が必要であることが示されています。
市販品と歯科の口腔内装置の違い
大きく整理すると次のようになります。
| 市販マウスピース | OSA用歯科口腔内装置 | |
|---|---|---|
| 作製 | 既製品・自己調整型など | 患者ごとに作製 |
| 歯科診査 | 原則なし | 必要 |
| 噛み合わせ確認 | 限定的 | 歯科医師が確認 |
| 顎関節評価 | 原則なし | 必要に応じて評価 |
| 下顎位 | 固定・自己調整など | 症例に合わせて調整 |
| OSA診断 | できない | 医科での診断を前提に使用 |
| 治療後評価 | 自己評価になりやすい | 医科・歯科で連携 |
| 長期フォロー | 原則なし | 推奨 |
重要なのは、
「高価だから歯科の装置が良い」という話ではなく、OSAという疾患を治療する場合には診断・調整・効果判定・長期管理まで含める必要がある
ということです。
歯科でマウスピースを作ればOSAの検査は不要?
いいえ。
順番が逆です。
閉塞性睡眠時無呼吸症が疑われる場合には、まず適切な睡眠医学的評価を受けることが基本になります。
口腔内装置療法が適切と判断された場合に、歯科医師が、
- 歯
- 歯周組織
- 噛み合わせ
- 顎関節
- 下顎の可動域
- 補綴物
- インプラント
などを確認して装置を作製・調整します。
2025年に更新されたAADSMのDental Sleep Medicine Standardsでも、睡眠関連呼吸障害に対する口腔内装置療法では、歯科医師と医師の連携が重要な要素として位置づけられています。
OSA用口腔内装置とナイトガードは同じ?
違います。
一般的なナイトガードは、
睡眠中の歯ぎしり・食いしばりによる歯や補綴物への負担を管理すること
を主な目的として使用されます。
一方、OSA用口腔内装置は、
睡眠中の上気道を確保しやすくすること
が目的です。
どちらも口の中に装着するため見た目は似ていますが、目的も設計も異なります。
したがって、
「歯ぎしり用マウスピースを持っているから、睡眠時無呼吸にも効く」
とは考えないほうがよいでしょう。
大人のプレオルソは「いびき用マウスピース」?
ここも明確に分ける必要があります。
PreBeau Oral Careで扱う**大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)**は、歯科用咬合スプリントです。
メーカー公式情報では、
- 矯正治療後の歯列の安定
- 歯ぎしり・食いしばりによる補綴物の保護
- インプラントへの過度な負担への対応
- 顎関節への負担軽減
などへの活用が示されています。
患者さんごとに口腔内データをもとに作製する装置です。
しかし、
プレオルソ ユーティリティと、診断されたOSAに対して下顎を前方へ移動させる専用の口腔内装置は同じものではありません。
ここはSEO上も医療上も混同しないことが大切です。
「大人のプレオルソでいびきを治す」という理解でよい?
そのように一括りにするのは適切ではありません。
いびきには、
- 鼻閉
- 上気道の形態
- 舌
- 顎
- 体重
- 飲酒
- 睡眠姿勢
- OSA
などさまざまな要因があります。
したがって、
「いびき=プレオルソ」
という単純な治療選択は行いません。
特に睡眠中の呼吸停止が疑われる場合には、先に睡眠医学的な評価が必要です。
一方で、
- 歯ぎしり
- 食いしばり
- 顎への負担
- セラミック・インプラントへの負担
- 矯正後の保定
といった問題がある場合には、大人のプレオルソが選択肢になるケースがあります。
「いびき」と「歯ぎしり」が両方ある場合は?
実際には、
「家族からいびきを指摘される」
と同時に、
「歯ぎしりもしている」
という方もいます。
しかし、
いびきと歯ぎしりを同じ原因、同じ治療として扱うことはできません。
睡眠時ブラキシズムと閉塞性睡眠時無呼吸症との関連については研究されていますが、両者の関係は単純ではありません。
そのため、
いびきについては睡眠呼吸の評価。
歯ぎしりについては歯、補綴物、顎、咬合などの評価。
というように、それぞれを整理して考える必要があります。
OSA用口腔内装置には副作用がある?
長期間使用すると、
- 顎関節の違和感
- 咀嚼筋の疲労
- 歯の違和感
- 唾液量の変化
- 口腔乾燥
- 歯列の変化
- 噛み合わせの変化
などが生じる場合があります。
そのため、2025年AADSM Standardsでも、装置を作製して終わりではなく、
副作用の確認と長期的なフォロー
が重要とされています。
特に噛み合わせの変化は、患者さん自身では気づきにくい場合があります。
定期的な歯科評価が重要です。
ネットで買う前に確認したい5つのこと
いびき用マウスピースを検討している場合、まず次の点を確認してみてください。
1.寝ていると呼吸が止まると言われていないか
これはOSAを疑う重要なサインです。
2.日中に強い眠気がないか
会議中、仕事中、運転中などの強い眠気は軽視しないほうがよいでしょう。
3.毎晩大きないびきをかいていないか
習慣的ないびきは、睡眠呼吸障害を評価するきっかけになります。
4.歯や顎に問題がないか
歯周病、動揺歯、顎関節症状、インプラントなどがある場合、下顎を動かす装置には特に注意が必要です。
5.目的は「いびき」なのか「歯ぎしり」なのか
目的によって選択する装置が異なります。
PreBeau Oral Careでは「マウスピースの名前」から治療を決めません
PreBeau Oral Careでは、
「いびきがあるからこのマウスピース」
「歯ぎしりがあるからこの装置」
というように、装置から治療を決めることを基本にはしていません。
まず、
何が問題なのか。
を整理します。
例えば、
いびきなのか。
無呼吸が疑われるのか。
歯ぎしりなのか。
食いしばりなのか。
顎関節への負担なのか。
セラミックやインプラントの保護なのか。
矯正後の保定なのか。
目的が違えば、適切な装置も変わります。
これは「必要以上に治療しない」「できるだけ今ある歯を守る」という当院の予防中心の考え方にもつながっています。
まとめ|「マウスピース」はすべて同じではありません
いびき対策として販売・使用されているマウスピースには、さまざまな種類があります。
特に区別したいのは、
市販のいびき対策マウスピース
OSAに対する歯科の口腔内装置
歯ぎしり用ナイトガード
大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)
です。
見た目が似ていても、目的は異なります。
特に、
「寝ていると呼吸が止まる」
「日中の眠気が強い」
「毎晩大きないびきをかく」
といった場合には、市販品で音だけを抑えようとする前に、睡眠時無呼吸症について一度評価を受けることが大切です。
OSAと診断され、口腔内装置療法が選択された場合には、患者さんごとに作製・調整される装置を歯科医師の管理下で使用し、必要に応じて睡眠医学的に効果を確認します。
一方、歯ぎしり・食いしばり、補綴物やインプラントへの負担、矯正後の保定などが主な問題であれば、プレオルソ ユーティリティを含む別の咬合スプリントが適している可能性があります。
「マウスピースだから同じ」ではなく、「何を目的に使う装置なのか」を確認すること。
これが最も重要です。
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参考文献・診療ガイドライン
- Ramar K, Dort LC, Katz SG, et al.
Clinical Practice Guideline for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Snoring with Oral Appliance Therapy: An Update for 2015.
Journal of Clinical Sleep Medicine. 2015;11(7):773–827.
PMID: 26094920.
DOI: 10.5664/jcsm.4858. - Levine M, Cantwell MK, Postol K, Schwartz DB.
Dental Sleep Medicine Standards for Screening, Treatment, and Management of Sleep-Related Breathing Disorders in Adults Using Oral Appliance Therapy: An Update.
Journal of Dental Sleep Medicine. 2025;12(2). - 日本睡眠歯科学会.
閉塞性睡眠時無呼吸に対する口腔内装置に関する診療ガイドライン(装置の作製に関するテクニカルアプレイザル:2020年版) - Scherr SC, Dort LC, Almeida FR, et al.
Definition of an effective oral appliance for the treatment of obstructive sleep apnea and snoring: a report of the American Academy of Dental Sleep Medicine.
Journal of Dental Sleep Medicine. 2014;1(1):39–50. - 株式会社フォレスト・ワン.
プレオルソ ユーティリティ|歯科用咬合スプリント
医療機器製造販売認証番号:225ADBZX00053000.
執筆・監修:歯科医師 毛利 国安
PreBeau Oral Care