いびきがひどいのはなぜ?毎晩いびきをかく原因と歯科で相談できること
Last Updated on 1 week ago by prebeau
「家族から毎晩いびきがうるさいと言われる」
「以前よりいびきがひどくなった気がする」
「寝ているときに呼吸が止まっていると言われた」
いびきは珍しいものではありません。
疲れている日やお酒を飲んだ日に一時的にいびきをかくこともあります。
しかし、ほぼ毎晩大きないびきをかく場合には、「ただのいびき」と決めつけないことが大切です。
いびきの背景には、鼻づまり、睡眠中の姿勢、体重、飲酒、舌や軟口蓋など上気道の形態と機能など、さまざまな要因があります。
さらに一部の方では、**閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA:Obstructive Sleep Apnea)**が隠れていることがあります。
東京・赤坂のPreBeau Oral Careでは、歯や噛み合わせだけを見るのではなく、舌、口呼吸、顎、睡眠中の口腔機能まで含めて考えることを大切にしています。
ただし、睡眠時無呼吸症の診断そのものは歯科だけで完結させるものではありません。
この記事では、
- そもそもなぜいびきをかくのか
- 毎晩いびきをかく原因
- 危険ないびきのサイン
- いびきと睡眠時無呼吸の違い
- 歯科で確認できること
- 口腔内装置と「大人のプレオルソ」の違い
について、歯科医師の立場から整理して解説します。
大人のプレオルソについて先に確認したい方はこちらをご覧ください。
そもそも「いびき」はなぜ起こる?
いびきは、睡眠中に空気が狭くなった上気道を通過するとき、軟口蓋や舌、咽頭周囲などの軟らかい組織が振動することで生じる音です。
起きているときと比べて、眠っているときには舌や喉の周囲の筋肉が弛緩します。
そのため気道が狭くなりやすくなり、そこを空気が通過すると周囲の組織が振動して「いびき」になります。
つまり、いびきそのものは一つの病名ではありません。
**「睡眠中に上気道が狭くなっていることを示す現象の一つ」**と考えると分かりやすいでしょう。
毎晩いびきをかく主な原因
いびきには一つだけの原因があるわけではありません。
複数の要因が重なっている方も少なくありません。
1.睡眠中に舌や喉の筋肉がゆるむ
睡眠中は全身の筋肉と同じように、舌や咽頭周囲の筋肉も弛緩します。
舌が後方へ移動したり、軟口蓋周囲が狭くなったりすると、上気道を通る空気の流れが乱れ、いびきが生じやすくなります。
特に仰向けで寝たときには、重力の影響によって舌が後方へ移動しやすいため、
「横向きでは静かなのに、仰向けになると急にいびきをかく」
という方もいます。
2.鼻づまり・鼻呼吸のしにくさ
鼻炎、アレルギー、風邪、鼻中隔弯曲などによって鼻から空気を通しにくくなると、睡眠中に口呼吸になりやすくなります。
鼻閉と睡眠呼吸障害の関係を検討した研究でも、鼻腔の通気性は、いびきや軽度の睡眠呼吸障害と関連する可能性が報告されています。
ただし、
「鼻づまりを治せばすべてのいびきや睡眠時無呼吸が治る」
という意味ではありません。
中等度以上の睡眠時無呼吸では、鼻だけでなく舌根部や咽頭など複数の部位が関係していることがあります。
3.体重の増加
体重増加、特に首や上気道周辺への脂肪組織の増加は、気道を狭くする要因になります。
そのため、
「以前はいびきをかかなかったのに、体重が増えてから指摘されるようになった」
というケースもあります。
ただし、睡眠時無呼吸は肥満の方だけに起こる病気ではありません。
痩せている方でも、顎の大きさ、舌の大きさ、上気道の形態などによって起こることがあります。
4.飲酒
就寝前の飲酒はいびきを悪化させることがあります。
アルコールによって上気道を支える筋肉が通常より弛緩しやすくなるためです。
「普段はいびきをかかないのに、お酒を飲んだ日はひどい」
という方は、この影響を受けている可能性があります。
特に睡眠時無呼吸がある方では、飲酒によって睡眠中の呼吸障害が悪化する可能性もあるため注意が必要です。
5.仰向けで寝ている
いびきには睡眠姿勢も関係します。
仰向けになると舌が後方へ移動しやすく、上気道が狭くなる場合があります。
このため一部の方では、横向きになるといびきが軽くなることがあります。
これは「体位依存性」と呼ばれる睡眠呼吸障害でもみられる特徴です。
6.口や顎、舌などの形態
口腔内にも、睡眠中の上気道と関係する構造があります。
例えば、
- 舌の大きさ
- 舌の位置
- 下顎の位置や大きさ
- 軟口蓋
- 口腔内のスペース
- 歯列や噛み合わせ
などです。
もちろん、歯並びを見ただけで睡眠時無呼吸を診断することはできません。
一方で、歯科は舌・顎・歯列・口腔周囲組織を日常的に観察する診療科でもあります。
そのため、歯科診療中に睡眠呼吸障害の可能性に気づくことがあります。
「ただのいびき」と睡眠時無呼吸はどう違う?
ここが最も重要です。
睡眠中に音は出るものの、睡眠時無呼吸などの病的な呼吸障害を認めないものは一般に**原発性いびき(primary snoring)**と呼ばれます。
一方、閉塞性睡眠時無呼吸症では、睡眠中に上気道が繰り返し狭窄・閉塞し、呼吸が弱くなったり止まったりします。
問題なのは、
本人や家族がいびきの音を聞いただけでは、この二つを完全には区別できない
ということです。
実際、医学文献でも原発性いびきと閉塞性睡眠時無呼吸を明確に区別したうえで評価することの重要性が繰り返し指摘されています。
こんないびきには注意してください
毎晩のいびきに加えて、次のような症状がある場合は、睡眠時無呼吸症を一度疑ってみる必要があります。
- 寝ている間に「呼吸が止まっている」と言われる
- 大きないびきの後に突然静かになる
- 睡眠中にむせる・あえぐ
- 朝起きても疲れが取れない
- 日中に強い眠気がある
- 集中力が低下している
- 朝に頭痛がする
- 夜中に何度も目が覚める
- 夜間に何度もトイレへ行く
- 高血圧を指摘されている
特に、
「大きないびき → 静かになる → 苦しそうに呼吸を再開する」
というパターンを家族から指摘されている場合は注意が必要です。
いびきだけなら放っておいても大丈夫?
時々いびきをかく程度であれば、必ずしも病気とは限りません。
一方で、毎晩の習慣性いびきの場合、「音がうるさい」という問題だけで判断しないほうがよいでしょう。
2024年の『Sleep Medicine Reviews』に掲載された原発性いびきに関するレビューでも、いびき単独の診断・治療については研究方法にばらつきがあり、OSAと明確に分けて評価した質の高い研究がまだ十分ではないことが指摘されています。
つまり、
「いびきだからこの治療をすればよい」と単純には決められない
というのが現在の医学的な考え方です。
まず「OSAではないか」を確認することが重要になります。
いびきは何科に相談すればいい?
いびきの原因によって相談先は異なります。
鼻閉や扁桃などが疑われる場合は耳鼻咽喉科。
睡眠時無呼吸が疑われる場合は、睡眠外来、呼吸器内科、耳鼻咽喉科など睡眠呼吸障害を診療している医療機関。
そして口腔内装置を検討する場合には、睡眠歯科を含む歯科が関わります。
重要なのは、
「歯科か医科か」の二者択一ではなく、必要に応じて医科と歯科を連携させることです。
歯科ではいびきについて何を見るの?
歯科では、必要に応じて次のような点を確認できます。
舌の状態
舌の大きさや位置、口腔内のスペースなどを確認します。
顎の形態
下顎の位置や大きさは、睡眠中の上気道と関係する場合があります。
歯列・噛み合わせ
口腔内装置を使用できる状態なのかを判断するうえで、歯、歯周組織、噛み合わせの確認が必要になります。
顎関節
下顎を前方へ移動させるタイプの口腔内装置では、顎関節や咀嚼筋の状態も重要です。
口呼吸・口腔乾燥
睡眠中に口が開いている方では、起床時の口腔乾燥を訴えることがあります。
このように、歯科には睡眠と関係する口腔側の情報を確認できる役割があります。
ただし、この診察だけで睡眠時無呼吸の有無を確定するわけではありません。
いびきに「マウスピース」が使われることはある?
あります。
睡眠医学では、下顎を前方へ保持することで上気道を広げることを目的とする**口腔内装置(Oral Appliance / Mandibular Advancement Device)**が用いられています。
AASM(American Academy of Sleep Medicine)とAADSM(American Academy of Dental Sleep Medicine)の診療ガイドラインでは、原発性いびきの成人に対する治療選択肢として口腔内装置が推奨されています。
また、閉塞性睡眠時無呼吸症についても、一定の条件のもとで口腔内装置が治療選択肢となります。
ただし重要なのは、「いびき用マウスピースなら何でも同じ」ではないことです。
市販のマウスピース。
歯ぎしり用ナイトガード。
歯科用咬合スプリント。
睡眠時無呼吸に対する下顎前方移動型口腔内装置。
これらは目的も設計も異なります。
大人のプレオルソはいびき治療用の装置なの?
ここも誤解しやすい部分です。
PreBeau Oral Careで扱う**大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)**は、歯科用咬合スプリントです。
歯ぎしり・食いしばりによる負担、補綴物やインプラントの保護、顎関節への負担、矯正後の保定などを考える際に用いられます。
一方で、
閉塞性睡眠時無呼吸症に対する正式な口腔内装置と、プレオルソ ユーティリティを同じものとして扱うことはできません。
「いびきをかくから、とりあえずプレオルソを入れておけばよい」という考え方ではなく、呼吸停止などOSAを疑うサインがある場合には、先に適切な医学的評価を受けることが重要です。
市販の「いびき防止マウスピース」を自己判断で使ってもいい?
注意が必要です。
特に、
- 呼吸停止を指摘されている
- 日中の強い眠気がある
- 高血圧などを指摘されている
- 大きないびきが毎晩続く
という方の場合、市販品だけで症状を抑えようとすると、背景にある睡眠時無呼吸の評価が遅れる可能性があります。
また、下顎の位置を変えるタイプの装置は、噛み合わせや顎関節への影響も考える必要があります。
長期間使用する場合には歯科的な管理も重要です。
まず自分でできることは?
いびきの原因によって異なりますが、一般的には、
- 就寝前の過度な飲酒を避ける
- 睡眠不足を避ける
- 鼻づまりがある場合は適切な診療を受ける
- 体重増加がある場合は生活習慣を見直す
- 仰向けで悪化する場合には睡眠姿勢を確認する
といったことが検討されます。
ただし、これらは睡眠時無呼吸症の医学的評価や治療の代わりになるものではありません。
PreBeau Oral Careでは「いびきの音」だけを見ません
いびきを相談されたときに、
「ではマウスピースを作りましょう」
とすぐに装置へ進むことが必ずしも適切とは限りません。
大切なのは、
なぜいびきをかいているのか。
そして、
医科での評価が先に必要な状態ではないか。
を考えることです。
PreBeau Oral Careでは、
- 歯列
- 噛み合わせ
- 舌
- 顎関節
- 口呼吸
- 歯ぎしり・食いしばり
- 補綴物やインプラントへの負担
など、歯科で確認できる範囲を評価します。
そのうえで睡眠時無呼吸症が疑われる場合には、歯科だけで完結させず、睡眠医療を扱う医療機関での評価をおすすめします。
これは、当院が大切にしている**「必要以上に治療しない」という予防歯科の考え方**にもつながっています。
院長・監修者については、こちらをご覧ください。
まとめ|毎晩のいびきは「原因を確認する」ことから
いびきは、睡眠中に狭くなった上気道を空気が通ることで、舌や軟口蓋など周囲の組織が振動して生じます。
原因には、
鼻づまり。
舌や喉の筋肉の弛緩。
睡眠姿勢。
飲酒。
体重。
顎や上気道の形態。
など、さまざまな要因があります。
そして最も重要なのは、
毎晩のいびきの中に、閉塞性睡眠時無呼吸症が隠れている可能性があることです。
特に「寝ていると呼吸が止まる」と指摘されている場合は、マウスピースを自己判断で選ぶ前に、一度適切な医学的評価を受けることをおすすめします。
歯科では、舌、顎、歯列、噛み合わせ、口呼吸、歯ぎしりなど、睡眠と関係する口腔側の要因を確認することができます。
医科と歯科、それぞれができることを正しく分けながら考えることが、安全ないびき対策への第一歩です。
▶ 大人のプレオルソ|歯ぎしり・食いしばり・睡眠と口腔機能について
参考文献・診療ガイドライン
- Ramar K, Dort LC, Katz SG, et al.
Clinical Practice Guideline for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Snoring with Oral Appliance Therapy: An Update for 2015.
Journal of Clinical Sleep Medicine. 2015;11(7):773-827.
PMID: 26094920. - Changsiripun C, Chirakalwasan N, Dias S, McDaid C.
Management of primary snoring in adults: A scoping review examining interventions, outcomes and instruments used to assess clinical effects.
Sleep Medicine Reviews. 2024;77:101963.
PMID: 38889620. - BaHammam AS.
Primary snoring: Bridging gaps in management and research.
Sleep Medicine Reviews. 2024;77:101979.
PMID: 39043056. - De Meyer MMD, Jacquet W, Vanderveken OM, Marks LAM.
Systematic review of the different aspects of primary snoring.
Sleep Medicine Reviews. 2019.
PMID: 30978609. - Stuck BA, Dreher A, Heiser C, et al.
Diagnosis and treatment of snoring in adults — S2k Guideline of the German Society of Otorhinolaryngology, Head and Neck Surgery.
Sleep & Breathing.
PMID: 24729153. - Ramar K, et al.
Use of mandibular advancement devices for the treatment of primary snoring with or without obstructive sleep apnea: A systematic review.
Sleep Medicine.
PMID: 33326914. - 日本睡眠歯科学会
閉塞性睡眠時無呼吸症に対する口腔内装置に関する診療ガイドライン(2017年改訂版) - 日本睡眠歯科学会
閉塞性睡眠時無呼吸に対する口腔内装置に関する診療ガイドライン ― 装置の作製に関するテクニカルアプレイザル:2020年版
執筆・監修:歯科医師 毛利 国安
PreBeau Oral Care