大人のプレオルソとは?プレオルソ ユーティリティの目的・使い方・適応を歯科医師が解説
Last Updated on 1 week ago by prebeau
「プレオルソは子どもの矯正に使うものでは?」
そう思われる方も多いかもしれません。
一般に「プレオルソ」という名前は小児の機能的マウスピース矯正で知られていますが、大人向けには**「プレオルソ ユーティリティ」**という歯科用の咬合スプリントがあります。
大人のプレオルソは、歯を大きく動かして歯並びを治すための矯正装置とは目的が異なります。
主な目的は、
- 睡眠中の歯ぎしり・食いしばりによる負担への対応
- セラミックなどの補綴物やインプラントの保護
- 顎関節への負担軽減
- 矯正治療後の歯列の安定・保定
- 噛み合わせや口腔機能を考えた管理
などです。
東京・赤坂のPreBeau Oral Careでは、「歯を悪くしてから削って治す」のではなく、できるだけ歯を守ることを重視しています。
この記事では、大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)がどのような装置なのか、一般的なナイトガードとの違い、どのような方が対象になるのか、使用する際の注意点まで歯科医師の立場から解説します。
大人のプレオルソについて治療内容から詳しく確認したい方は、先にこちらをご覧ください。
大人のプレオルソ「プレオルソ ユーティリティ」とは?
プレオルソ ユーティリティは、患者さんごとの歯列や噛み合わせに合わせて作製する歯科用咬合スプリントです。
小児用プレオルソと名前は似ていますが、「大人の歯並びをプレオルソだけで矯正する」という装置ではありません。
大人の場合、重要になるのはすでにある歯並びそのものだけではなく、
「今ある歯をどう守るか」
「治療したセラミックやインプラントをどう守るか」
「睡眠中の無意識の力から口腔内をどう守るか」
という視点です。
特に歯ぎしりや食いしばりは、本人が気づいていないことも少なくありません。
朝起きると顎が疲れている。
歯がすり減っている。
セラミックが何度も欠ける。
インプラントや奥歯に強い力がかかっている。
こうした場合、単に壊れた部分を修理するだけでなく、なぜそこに強い力が加わっているのかを考えることが重要です。
プレオルソ ユーティリティの主な目的
1.歯ぎしり・食いしばりによる負担から歯を守る
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、自分自身で意識的に止めることが難しい習慣です。
咬合スプリントには、上下の歯が直接強く接触することによって生じる摩耗や補綴物への負担を管理する役割があります。
ただし、重要なのは、
「マウスピースを入れれば歯ぎしりそのものが治る」とは限らない
という点です。
近年の研究でも、咬合スプリントが睡眠時ブラキシズムの筋活動そのものを確実に消失させるとは言えないことが報告されています。
そのため当院では、「歯ぎしりを治す魔法の装置」としてではなく、歯や補綴物を守りながら、必要に応じて噛み合わせ・生活習慣・口腔機能などを総合的に評価するための選択肢の一つとして考えます。
2.セラミックやインプラントなどの補綴物を守る
「せっかく治療したセラミックが何度も欠ける」
「インプラントに強い力がかかっていないか心配」
という方にも、睡眠中の咬合力を評価することは重要です。
プレオルソ ユーティリティのメーカー公式情報でも、歯ぎしり・食いしばりによる補綴物やインプラントへの負担軽減が用途の一つとして示されています。
特にインプラントやセラミック治療では、治療が終了した時点がゴールではありません。
治療した歯をその後どう守るか。
ここまで含めて長期的な口腔管理を考える必要があります。
3.顎関節への負担を考える
朝起きたときに、
- 顎が重い
- 顎の筋肉が疲れている
- 口を開けると違和感がある
- 頬やこめかみが張っている
と感じる場合、睡眠中の食いしばりや歯ぎしりが関係しているケースがあります。
プレオルソ ユーティリティは、顎関節や咀嚼筋への過剰な負担を考える際にも使用される咬合スプリントです。
ただし、顎関節症にはさまざまな原因があります。
強い痛み、開口障害、急激な症状の悪化などがある場合は、マウスピースだけで判断せず、適切な診査・診断を受けることが大切です。
4.矯正後の後戻りを防ぐための保定
歯列矯正が終了しても、歯はすぐに完全に安定するわけではありません。
矯正後には、歯が元の位置へ戻ろうとする「後戻り」が起こることがあります。
そのため矯正治療では、歯を動かした後の**保定(retention)**が非常に重要です。
プレオルソ ユーティリティは、症例によっては矯正治療後の歯列を安定させるための保定装置として使用されることがあります。
ただし、すべての矯正後症例で同じ装置が適しているわけではありません。
元の歯並び、矯正方法、現在の噛み合わせ、後戻りの程度などによって適切なリテーナーは変わります。
一般的なナイトガードとの違いは?
歯ぎしりや食いしばりに対して、一般的に歯科医院で使用される装置の一つが「ナイトガード」です。
ナイトガードにもさまざまな設計があります。
そのため、
「ナイトガード=この形」
「プレオルソ=ナイトガードより必ず優れている」
と単純に比較することはできません。
重要なのは装置の名称ではなく、
何を目的として、どのような噛み合わせに対して、どの設計を選択するか
です。
プレオルソ ユーティリティは、大人向けに設計されたオーダーメイドの咬合スプリントで、保定、補綴物やインプラントの保護、顎関節への負担軽減など複数の目的を考慮して使用されます。
患者さんによっては通常のナイトガードのほうが適している場合もあります。
大人のプレオルソはどんな人に向いている?
代表的には、次のような方が相談の対象になります。
- 睡眠中の歯ぎしりを指摘された
- 日中または睡眠中の食いしばりが気になる
- 朝起きると顎が疲れている
- 歯がすり減ってきた
- セラミックが欠けることがある
- インプラントに過剰な力がかからないか心配
- 矯正治療後の保定について相談したい
- 現在使っているナイトガードが合わない
- 噛み合わせと口腔機能を含めて相談したい
ただし、「当てはまる=必ずプレオルソが適している」という意味ではありません。
まず現在の歯列、歯周組織、顎関節、補綴物、インプラント、噛み合わせなどを確認してから判断します。
いびき・睡眠時無呼吸がある場合はどうする?
ここは非常に重要です。
いびきがある方の中には、**閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)**が隠れていることがあります。
大きないびきに加えて、
- 寝ている間に呼吸が止まると言われる
- 日中に強い眠気がある
- 朝起きても疲れが取れない
- 起床時に頭痛がある
- 夜中に何度も目が覚める
といった症状がある場合は、「歯科用マウスピースを作れば大丈夫」と自己判断するべきではありません。
睡眠時無呼吸症候群は全身の健康にも関わる疾患であり、必要に応じて睡眠医療を扱う医療機関で検査・診断を受けることが重要です。
睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置という治療選択肢自体はありますが、診断されたOSAに対する正式な口腔内装置治療と、歯ぎしり・補綴物保護などを目的としたプレオルソ ユーティリティを同じものとして考えるべきではありません。
PreBeau Oral Careでも、歯科の範囲を超える睡眠呼吸障害が疑われる場合には、必要な医科受診をおすすめします。
大人のプレオルソはオーダーメイド
プレオルソ ユーティリティは、市販の「お湯で柔らかくして自分で合わせるマウスピース」とは異なります。
患者さんごとの口腔内データをもとに作製するオーダーメイドの装置です。
重要なのは、
装置そのものを作ることより、何のために作るのかを最初に決めること。
食いしばり対策なのか。
補綴物・インプラントの保護なのか。
矯正後の保定なのか。
顎関節への負担を考えているのか。
目的によって確認すべきポイントも変わります。
どのくらい装着する?
基本的には就寝時の使用を中心に考えます。
ただし、装着時間や使用方法は患者さんの目的や口腔内の状態によって異なるため、「全員が必ず同じ時間」というものではありません。
また、装置を作ったら終わりではありません。
使用開始後に、
- 痛い場所がないか
- 噛み合わせに違和感がないか
- 歯や顎に新しい症状が出ていないか
- 装置が変形・破損していないか
などを確認し、必要に応じて調整します。
「大人のプレオルソで何でも治る」わけではありません
プレオルソ ユーティリティには複数の用途がありますが、すべての口腔症状を一つのマウスピースで治療できるわけではありません。
例えば、
むし歯が原因の歯の痛み。
重度の歯周病。
歯根破折。
急性炎症。
重度の顎関節症。
睡眠時無呼吸症候群。
こうした問題は、それぞれ適切な診断と治療が必要です。
だからこそ、大人のプレオルソを考えるときには、
「このマウスピースにどんな効果がありますか?」
だけではなく、
「自分の症状の原因は何なのか?」
を最初に確認することが大切です。
PreBeau Oral Careが大切にしていること
PreBeau Oral Careは、東京・赤坂にある予防・審美を中心とした自由診療の歯科医院です。
当院が大切にしているのは、
できるだけ歯を削らず、今ある歯を長く守ること。
歯ぎしりや食いしばりについても、「歯が壊れたら修復する」という考え方だけではなく、壊れる前から力の問題を考えることが予防につながります。
特にセラミックやインプラントなどの治療を受けた方では、治療後のメンテナンスと力のコントロールを長期的に考えることが重要です。
院長・監修者については、こちらをご覧ください。
お口全体を長期的に守る予防・メンテナンスについては、こちらでも詳しく解説しています。
まとめ|大人のプレオルソは「歯を動かす装置」ではなく「今ある歯を守る」という選択肢
大人のプレオルソ(プレオルソ ユーティリティ)は、小児のプレオルソと同じ目的で使用するものではありません。
大人では、
歯ぎしり。
食いしばり。
補綴物やインプラントへの過剰な負担。
顎関節への負担。
矯正後の保定。
といった問題を考える際の歯科用咬合スプリントとして活用されます。
ただし、装置だけですべての症状を解決するものではありません。
まず原因を確認し、その方にプレオルソ ユーティリティが適しているのか、通常のナイトガードや別の対応が適しているのかを判断することが重要です。
「最近、歯がすり減ってきた」
「朝起きると顎が疲れている」
「セラミックやインプラントを長く守りたい」
「矯正後の歯並びをできるだけ安定させたい」
という方は、歯科医院で一度噛み合わせや口腔内の状態を確認してみるとよいでしょう。
▶ 大人のプレオルソ|プレオルソ ユーティリティの治療詳細はこちら
参考情報
プレオルソ ユーティリティは、歯科器材メーカーの公式情報では「歯科用咬合スプリント」とされ、矯正後の保定、歯ぎしり・食いしばりによる補綴物・インプラントの保護、顎関節への負担軽減などへの活用が示されています。
また、睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置治療については、日本睡眠歯科学会やAmerican Academy of Sleep Medicine(AASM)などから診療ガイドラインが公開されています。
睡眠時無呼吸が疑われる場合には、歯科だけで自己完結せず、適切な睡眠医学的評価を受けることが重要です。
執筆・監修:歯科医師 毛利 国安
PreBeau Oral Care