インプラントの長期安定を左右する「被せ物」の設計と固定方法
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執筆・監修:毛利 国安(PreBeau Oral Care 院長)
米国ミシガン大学歯周病科 元ポスドク研究員 / UCLAインプラント科 クリニカルレジデンシー修了 / ICOI(国際口腔インプラント学会)Fellow / 歯科医師・歯学博士
はじめに:インプラント治療における「被せ物(上部構造)」の重要性
インプラント治療において、顎の骨にインプラント体(人工歯根)がしっかりと結合することは治療の重要な第一歩です。しかし、インプラントが10年、20年と長期的に安定し機能するかどうかは、骨の中のインプラント体だけでなく、その上に装着される「被せ物(上部構造)」の固定方法、設計、素材に大きく依存します。
私はこれまで、米国ミシガン大学歯周病科の研究員として歯周組織の基礎研究に携わり、UCLAインプラント科の臨床レジデンシーにて、外科処置から被せ物の作製(補綴)、そして長期的なメンテナンスに至る包括的な治療を学んでまいりました。本記事では、歯周病学およびインプラント学の知見と、学術的な文献に基づき、インプラントの被せ物に関する重要なポイントを解説いたします。
※インプラント周囲炎のより専門的な診断・予防・管理のメカニズムについては、私が翻訳統括を務めた専門書籍『インプラント周囲炎を紐解く : 診断・予防・管理のすべて(クインテッセンス出版)』でも詳細に解説しております。
1. 当院が「スクリュー固定(ネジ留め)」を推奨する理由
インプラントに被せ物を固定する方法には、接着剤を使用する「セメント固定」と、小さなネジを使用する「スクリュー固定」の2種類があります。当院では、医学的な根拠とこれまでの臨床経験に基づき、原則として「スクリュー固定」を推奨しています。
セメント固定によるインプラント周囲炎のリスク
セメント固定は従来から広く用いられてきた手法です。しかし、歯肉の深い位置で接着を行った場合、余剰セメント(はみ出した接着剤)を完全に除去することは極めて困難です。
多数の臨床研究(後述の参考文献1, 2)により、この「残留した余剰セメント」が細菌の温床となり、インプラント周囲炎(周囲の骨が溶ける病気)を引き起こす重大なリスク因子になることが示されています。
スクリュー固定のメリット
スクリュー固定にはセメントを一切使用しないため、接着剤の残留による炎症リスクを根本的に排除できます。また、必要に応じて歯科医師がネジを緩めて被せ物を取り外すことができるため、定期的なクリーニングや、万が一の際の修理・メンテナンスが確実かつ容易に行えるという長期的な利点があります。
2. 長期安定のための「エマージェンス・プロファイル」と素材
インプラント周囲の歯肉は、天然の歯肉に比べて血液供給が少なく、細菌感染に対する防御機構が弱いという特徴があります。そのため、被せ物のデザインには細心の注意が必要です。
- 適切なエマージェンス・プロファイル(立ち上がり形態) インプラント体から歯肉を貫通して口腔内へ出る部分の形態は、周囲の歯肉を過度に圧迫せず、かつ患者様ご自身でフロスや歯間ブラシを用いた清掃(セルフケア)がしやすい適切な形状(コンター)に設計されなければなりません。
- 生体親和性の高い素材の選択 被せ物の素材としては、強度と生体親和性に優れたジルコニアが現在推奨されています。表面が滑らかでプラーク(歯垢)が付着しにくいため、インプラント周囲の軟組織の健康維持に寄与します。
3. 他院でのインプラント治療でお困りの方へ
当院(プレビュー)では、他の歯科医院でインプラント治療を受けられた患者様からのご相談も承っております。以下のようなケースでお困りの方はご相談ください。
- 「インプラントを骨に埋める手術(一次手術)は終わったが、引っ越し等の事情で被せ物の治療がまだ終わっていない」
- 「他院で被せ物を装着したが、頻繁にネジが緩んでしまってうまく噛めない」
- 「被せ物の形に違和感があり、汚れが溜まりやすいと感じている」
被せ物の緩みや不適合は、噛み合わせのバランス不良や、部品の劣化・破損が原因で起こることがあります。放置するとインプラント体そのものへのダメージに繋がるため、早めの確認が必要です。
【重要】スムーズな対応のためにご持参いただきたい情報
他院で埋入されたインプラントの被せ物を作製したり、トラブルに対応したりする際、インプラントの「メーカー」「モデル(種類)」「サイズ(直径等)」の情報が必要不可欠です。世界には数百種類のインプラントメーカーが存在し、それぞれ使用する専用の器具(ドライバー等)や部品の規格が異なります。
ご来院の際は、前医からの紹介状、またはインプラント手術時にお渡しされるインプラントカード(インプラントパスポート)をご持参いただけますと、対応が非常にスムーズになります。情報がない場合でもレントゲン画像等からの特定を試みますが、困難なケースもございますので、可能な限り事前に情報をご確認いただくことをお勧めいたします。
インプラント被せ物とメンテナンスの詳細・料金について
当院で提供しているインプラントの被せ物(上部構造)の種類や、専門医による長期的なメンテナンスプログラム、および料金体系については、以下のページにて詳しくご案内しております。
▶ インプラント治療・被せ物・メンテナンスの詳細と料金はこちら
【参考文献(Reference)】 本記事の内容は、以下の学術文献等に基づき構成しています。
- Wilson TG Jr. “The positive relationship between excess cement and peri-implant disease: a prospective clinical endoscopic study.” J Periodontol. 2009;80(9):1388-1392.
- Linkevicius T, et al. “The influence of margin location on the amount of undetected cement excess after delivery of cement-retained implant restorations.” Clin Oral Implants Res. 2013;24(1):71-76.
- Katafuchi M, et al. “Restoration contour is a risk indicator for peri-implantitis: A cross-sectional radiographic analysis.” J Clin Periodontol. 2018;45(2):225-232.
- Alberto Monje, Hom-Lay Wang(編), 福場駿介, 柴崎竣一, 毛利国安(翻訳統括) 『インプラント周囲炎を紐解く : 診断・予防・管理のすべて』 クインテッセンス出版, 2025.
クリニック情報
PreBeau Oral Care(プレビュー・オーラル・ケア)
- 住所: 〒107-0052 東京都港区赤坂3-15-5 アーベイン赤坂5階501号
- 電話番号: 03-6821-7481
- 診療時間:
- 月・火・水・木・金:09:30 – 13:30 / 14:30 – 18:30
- 休診日:土曜・日曜・祝日
- 公式サイト: https://prebeau-oc.com/