他院でインプラントを埋入したけれど被せ物がまだの方へ|上部構造だけの作製とスクリュー固定
Last Updated on 3日 ago by prebeau
「インプラントは骨に入っているけれど、まだ被せ物を入れていない」
「インプラントを入れた歯科医院に通えなくなった」
「海外や遠方でインプラントを埋入して、被せ物だけ東京で作りたい」
「手術をした先生とは別の歯科医院で、インプラントの被せ物を作ることはできる?」
このようなケースがあります。
結論からいうと、
すでに他院でインプラント体が埋入されていても、使用されているインプラントシステムなど必要な情報を確認できれば、別の歯科医院で上部構造(被せ物)の作製を検討できる場合があります。
インプラント治療は、
インプラント体を骨に埋入する外科治療
と、
その上に歯の形を作る補綴治療
を分けて考えることができます。
PreBeau Oral Careでは、新しいインプラントの埋入手術は行っていません。
一方で、
- 他院で埋入済みのインプラントのメンテナンス
- インプラント周囲疾患への非外科的ケア
- インプラント上部構造の診査
- 被せ物の再製作
- 条件が確認できる場合の、埋入済みインプラントへの上部構造作製
に対応しています。
詳しい診療範囲は、東京・赤坂の他院インプラントメンテナンス・周囲炎の非外科的ケア・被せ物の相談をご覧ください。
インプラントは「埋入」と「被せ物」で治療が分かれている
一般に「インプラント治療」というと、すべてが一つの処置のように感じるかもしれません。
しかし実際には、大きく分けて、
- インプラント体を顎の骨に埋入する
- 骨との結合を確認する
- アバットメントなど補綴に必要な部品を選択する
- 上部構造(被せ物)を作製する
- 上部構造を装着する
- メンテナンスを継続する
という段階があります。
そのため、
「インプラント体はすでに入っているが、最終的な被せ物だけまだ」
という状態で転院することもあります。
他院で入れたインプラントでも、被せ物だけ作れる?
条件が整えば検討できます。
ただし、インプラントの被せ物は天然歯のクラウンとは異なります。
インプラントメーカーやシステムごとに、
- インプラントとアバットメントの接続形態
- プラットフォーム
- スクリュー
- 専用ドライバー
- 印象用パーツ
- スキャンボディ
- Ti-base
- 補綴コンポーネント
などが異なるためです。
つまり、
「インプラントが入っている」だけでは、どの部品を使えばよいか分からない
場合があります。
だからこそ、他院で埋入されたインプラントの補綴では、インプラント情報の確認が非常に重要になります。
分かると助かるインプラント情報
可能であれば、次の情報を確認してください。
インプラントメーカー
例えば、どのメーカーのインプラントが使用されているか。
インプラントシステム・製品名
同じメーカーでも複数のインプラントシステムがあります。
インプラント径
直径によって使用できる補綴パーツが異なる場合があります。
プラットフォーム・接続規格
補綴物を接続するうえで特に重要な情報です。
埋入部位
どの歯の位置に、何本埋入されているか。
手術日
埋入からどの程度経過しているか。
インプラントカード
メーカー、製品番号、サイズなどの情報が記載されている場合があります。
過去のレントゲン・CT
埋入位置や骨の状態を確認する参考になります。
一番役立つのは「インプラントカード」
インプラント治療後に、インプラントカードや製品ラベルを渡されていることがあります。
そこには、
- メーカー
- インプラント名
- 直径
- 長さ
- ロット番号
などが記載されている場合があります。
もし手元にあるなら、転院先へ持参してください。
特に上部構造を作る場合は、
「どこのメーカーか分からない」
よりも、
「メーカー・システム・接続規格が分かっている」
方が対応を進めやすくなります。
インプラント情報が分からない場合は?
まず診査することは可能な場合があります。
過去のレントゲン、現在のエックス線像、口腔内の形態などから使用されているインプラントを推定できるケースもあります。
インプラントのX線画像からシステムを識別することについても以前から研究されています。
ただし、
画像だけですべてのインプラントを確実に同定できるわけではありません。
似た形状のインプラントもあり、誤った部品を使用することは避けなければなりません。
そのため、可能であれば以前の歯科医院へ問い合わせ、
使用したインプラントのメーカー、システム名、直径、長さ、接続規格が分かる資料をいただけますか
と確認することをおすすめします。
他院インプラントの転院については、他院で入れたインプラントのメンテナンスは受けられる?転院・違う歯医者で診てもらうときの注意点でも詳しく解説しています。
海外でインプラントを入れた場合も対応できる?
検討できる場合があります。
海外でインプラントを埋入して、
「帰国後に日本で被せ物を入れたい」
というケースもあります。
この場合は特に、
- implant manufacturer
- implant system
- implant diameter
- implant length
- platform
- connection
- prosthetic components
などが分かる資料が重要です。
海外では、日本国内で流通していないインプラントシステムが使用されていることもあります。
メーカーや製品を確認できても、国内で必要な補綴部品を入手できない場合には対応できないこともあります。
PreBeau Oral Careでは英語での診療にも対応しているため、英語のインプラントカードや治療資料がある場合も確認しながら進めます。
被せ物を作る前に、まずインプラント自体を確認する
「インプラントが入っているから、すぐ型を取って被せ物を作る」
とは限りません。
上部構造を作製する前には、
- インプラント周囲に炎症がないか
- 骨の状態
- インプラントの安定
- 軟組織の状態
- 埋入位置
- 埋入角度
- 隣の歯との位置関係
- 対合歯との噛み合わせ
- 補綴スペース
などを確認します。
特に埋入した医院とは別の歯科医院で補綴を行う場合、手術時の情報をすべて持っているわけではないため、現在の状態を改めて診査することが重要です。
PreBeau Oral Careではスクリュー固定を基本的な選択肢として考えます
インプラントの被せ物を固定する方法には、大きく、
スクリュー固定(screw-retained)
と
セメント固定(cement-retained)
があります。
PreBeau Oral Careでは、インプラントの位置や角度、審美性、使用できる補綴部品などの条件が許せば、長期的なメンテナンス性を考えてスクリュー固定を基本的な選択肢として検討しています。
理由の一つは、**retrievability(撤去・再アクセスのしやすさ)**です。
スクリュー固定とは?
スクリュー固定では、インプラントやアバットメントと被せ物をスクリューによって固定します。
被せ物にはスクリューへアクセスするための小さな穴を設け、装着後にコンポジットレジンなどで封鎖します。
必要になった場合には、このアクセスホールからスクリューへ再びアクセスできます。
そのため、
- 被せ物を外して確認したい
- スクリューを確認したい
- 補綴物を修理したい
- 清掃のために上部構造を外す必要がある
- 周囲組織を確認したい
といった状況に対応しやすいことがあります。
インプラント補綴に関するレビューでも、retrievabilityはスクリュー固定の代表的な利点の一つとして挙げられています。
なぜ「あとで外せること」が重要?
インプラントの被せ物は、装着したら一生何も起こらないとは限りません。
長く使用するなかで、
- セラミックが欠ける
- スクリューが緩む
- 接触点が変化する
- 食べ物が詰まりやすくなる
- 清掃性を改善したい
- 周囲組織に炎症が起こる
ことがあります。
そのとき、
補綴物へ再アクセスできる設計
であることは、メンテナンスや修理を考えるうえでメリットになります。
これは、
「スクリュー固定ならトラブルが起きない」
という意味ではありません。
トラブルが起きたときに対応しやすい設計にしておくという考え方です。
セメント固定とは?
セメント固定では、インプラントに装着したアバットメントの上へ被せ物をセメントで固定します。
この方法にも、
- アクセスホールが表面に出ない
- 埋入角度によっては審美的・補綴的に対応しやすい
- 補綴設計の自由度を得られる場合がある
などの利点があります。
つまり、
スクリュー固定が常に正しく、セメント固定が間違い
ということではありません。
実際、研究をまとめたレビューでも、両者にはそれぞれ利点・欠点があり、インプラントの生存や補綴物の成績だけから一方を全面的に優れているとは言えません。
スクリュー固定ならインプラント周囲炎になりにくい?
ここは誤解しないことが重要です。
2025年にJournal of Prosthetic Dentistryに掲載されたランダム化比較試験のシステマティックレビュー・メタ解析では、
セメント固定とスクリュー固定の間で、インプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎の発生リスクに有意差は認められませんでした。
したがって、
「スクリュー固定にすれば周囲炎を予防できる」
とは言えません。
PreBeau Oral Careがスクリュー固定を基本的な選択肢として考える理由は、
周囲炎にならないからではなく、長期管理の際に再アクセスしやすいという補綴上の利点を重視しているから
です。
セメントの取り残しについて
セメント固定で以前から議論されている問題の一つに、余剰セメントがあります。
被せ物を装着するときに歯ぐきより深い位置へセメントが入り込み、完全に除去できない場合があります。
余剰セメントとインプラント周囲組織の炎症との関連を示した臨床研究も報告されています。
一方で、現在のシステマティックレビューからは、
セメント固定そのものがスクリュー固定より周囲炎を多く起こす
と単純には結論づけられません。
重要なのは、
- セメントマージンの位置
- 適切なセメント量
- 余剰セメントの除去
- 補綴物の形態
- 清掃性
などを適切に管理することです。
つまり、
「セメント=悪」ではありません。
スクリュー固定にもデメリットはある
スクリュー固定にも注意点があります。
例えば、
- スクリューアクセスホールの位置
- 審美性
- スクリューの緩み
- スクリュー破折
- セラミックの破損
- インプラントの角度によって直接スクリュー固定が難しい
などです。
研究でも、スクリュー固定とセメント固定では生物学的・技術的合併症のパターンが異なることが示されています。
どちらか一方がすべての症例で優れているわけではありません。
インプラントの角度が悪くてもスクリュー固定にできる?
症例によります。
通常のスクリューアクセスでは、インプラントの角度によってアクセスホールが、
- 前歯の唇側
- 噛む面の好ましくない位置
などに出てしまう場合があります。
近年では、angulated screw channelなどを利用してアクセス方向を変更できる補綴システムもあります。
ただし、使用できる角度や部品はインプラントシステムによって異なります。
したがって、
「どんなインプラントでもスクリュー固定にできる」
わけではありません。
被せ物の形は、見た目だけでなく「掃除できるか」が重要
PreBeau Oral Careで特に重視しているのがここです。
インプラントの被せ物を作るとき、
「天然歯のように見えるか」
はもちろん重要です。
しかし、それだけではありません。
長期的には、
患者さん自身が毎日清掃できる形になっているか
が非常に重要です。
例えば、
- フロスが通るか
- 歯間ブラシを使用できるか
- 被せ物が過度に張り出していないか
- インプラント周囲へ清掃器具がアクセスできるか
を考えます。
どれだけきれいな被せ物でも、患者さんが毎日清掃できない形であれば、長期的な管理が難しくなる可能性があります。
エマージェンスプロファイルとは?
インプラントの被せ物が歯ぐきから立ち上がってくる形を**エマージェンスプロファイル(emergence profile)**と呼びます。
この形態は、
- 見た目
- 歯ぐきの形態
- 清掃性
- インプラント周囲組織
と関係します。
インプラント補綴の形態とインプラント周囲炎の関連を検討した研究では、特定の補綴形態がリスクと関連する可能性も報告されています。
だからこそ、
「白い歯を作れば終了」ではなく、患者さん自身が維持できる上部構造にする
ことを考える必要があります。
「インプラントの情報さえあれば必ず作れる」ではありません
ここも重要です。
インプラント情報が分かることは非常に有利です。
しかし、
情報が分かれば100%被せ物を作れる
という意味ではありません。
例えば、
- インプラント体に問題がある
- 周囲に進行した骨吸収がある
- 埋入位置が補綴的に非常に難しい
- 必要な部品が国内で入手できない
- インプラントシステムがすでに廃番になっている
- 接続部分が損傷している
場合などは、希望どおりの補綴ができない可能性があります。
まず現在の状態を診査したうえで判断します。
すでに被せ物が入っている場合も相談できる?
はい。
この記事では「被せ物がまだ入っていない」ケースを中心に説明していますが、
- 被せ物が取れた
- セラミックが割れた
- 被せ物がグラグラする
- 食べ物が詰まる
- 清掃しにくい
- 現在の上部構造を作り直したい
という場合もあります。
この場合は、
今ある被せ物を修理できるのか
被せ物だけ作り直せるのか
スクリューやアバットメントの問題なのか
インプラント体そのものに問題があるのか
を区別する必要があります。
このテーマは、別記事で詳しく解説します。
被せ物を入れた後こそメンテナンスが始まる
最終的な上部構造が装着されたら、それでインプラント治療が完全に終了するわけではありません。
その後は、
- プラークコントロール
- プロービング時出血
- 排膿
- 骨の状態
- 噛み合わせ
- スクリュー
- 上部構造
- 清掃性
などを継続的に確認します。
インプラントの定期管理については、インプラントのメンテナンスは何をする?頻度・クリーニング・自宅ケアと周囲炎予防をご覧ください。
PreBeau Oral Careで対応を検討できるケース
PreBeau Oral Careではインプラントの新規埋入手術は行っていません。
一方、
すでに他院で埋入されたインプラントを、補綴とメンテナンスの側からサポートする
ことを行っています。
例えば、
- 他院でインプラントを埋入したが被せ物がまだない
- 埋入後に転居した
- 海外で埋入して日本へ帰国した
- 埋入した先生が退職した
- 埋入医院が閉院した
- 他院の被せ物を作り直したい
- 清掃しやすい上部構造へ見直したい
- その後のインプラントメンテナンスもお願いしたい
という場合です。
インプラントカード、メーカー情報、治療記録などをお持ちの場合はご持参ください。
必要な情報を確認し、使用できる補綴部品と現在の口腔内の状態を確認したうえで対応可否を判断します。
東京・赤坂|他院インプラントのメンテナンス・上部構造・被せ物の相談
本記事の執筆・監修について
本記事を執筆・監修する毛利国安は、大阪大学歯学部卒業後、University of Michiganの歯周病学分野でポスドク研究員を経験し、UCLA ACT Surgical Implant Dentistry Residentとしてインプラントの臨床研修を行っています。
またICOI Fellowとして、インプラント補綴・インプラント周囲疾患に関連する書籍の翻訳・執筆にも携わっています。
インプラント周囲疾患を扱う専門書、
(Alberto Monje・Hom-Lay Wang編、クインテッセンス出版)では、日本語版の翻訳統括を担当しています。
これらの経歴は個々の治療結果を保証するものではありませんが、インプラントを「入れるところまで」だけではなく、補綴・メンテナンス・インプラント周囲組織を含めて長期的に考える診療方針の背景となっています。
まとめ|埋入した医院と被せ物を作る医院が違っても、対応できる場合があります
他院でインプラントを埋入したあと、
「もうその医院へ通えないから、被せ物を作れない」
と諦める必要はありません。
重要なのは、
- どのインプラントが入っているか
- 補綴部品を入手できるか
- インプラントそのものが安定しているか
- 周囲組織が健康か
- 補綴的に被せ物を作製できる位置にあるか
を確認することです。
インプラントメーカー、システム、径、接続規格などの情報が分かれば、よりスムーズに対応可能性を判断できます。
PreBeau Oral Careでは、条件が整う場合、他院で埋入されたインプラントに対する上部構造のみの作製にも対応を検討します。
固定方法については、長期的な再アクセス・修理・メンテナンス性を考え、可能な症例ではスクリュー固定を基本的な選択肢として考えています。
ただし、スクリュー固定・セメント固定にはそれぞれ長所と短所があり、インプラント位置や補綴条件に応じて選択します。
他院で入れたインプラントの被せ物・メンテナンスについて相談する
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参考文献
- Wittneben JG, Joda T, Weber HP, Brägger U. Screw retained vs. cement retained implant-supported fixed dental prosthesis. Periodontology 2000. 2017.
- Sailer I, et al. Cemented and screw-retained implant reconstructions: a systematic review of the survival and complication rates. Clinical Oral Implants Research. 2012.
- Lemos CAA, et al. A systematic review of screw- versus cement-retained implant-supported fixed restorations.
- Incidence of peri-implant disease associated with cement- and screw-retained implant-supported prostheses: A systematic review and meta-analysis. Journal of Prosthetic Dentistry.
- Screw- versus cement-retained implant prostheses: a systematic review of prosthodontic maintenance and complications.
- Techniques for retrievability and for registering screw access holes in cement-retained implant-supported prostheses: A scoping review.
- インプラント周囲炎を紐解く―診断・予防・管理のすべて|CiNii Books
執筆・監修:毛利 国安
歯科医師/PreBeau Oral Care 院長
UCLA ACT Surgical Implant Dentistry Resident修了・ICOI Fellow
※本記事は一般的な歯科医療情報の提供を目的としています。他院で埋入されたインプラントへの上部構造作製の可否は、インプラントシステム、補綴部品の入手可否、インプラント周囲組織、骨、埋入位置・角度、咬合などによって異なります。実際の対応可否には診査が必要です。